▼化物

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▼化物

僕の彼女はもしかしたら化物なのかもしれない。 金曜日の朝、目を覚ますと隣に彼女はおらず、キッチンからカタコトと物音が聞こえてくる。 おかしい。だって昨日、僕は確かに彼女を縛って拘束していたはずだ。 拘束したのには理由がある。 付き合ったばかりのころは気付かなかったが、ここのところ、僕は食われるかもしれないという瞬間が幾度とあった。 だから僕は彼女にバレないように、寝ている間に彼女を拘束した。 しかし今朝、彼女はコトコトとキッチンに立っているではないか。 そしてキッチンから流れる嗅いだことのない臭い……。 ふと、僕は自分の体を見た。 僕が縛られていた。 僕の爪には切られた跡がある。 髪の毛にも若干、違和感がある。 あったはずのもみあげがない。 布団の上には散らばった毛がある。 これは……と思った瞬間に彼女は言った。 「おはよう、ごはんできてるわよ」 僕は一体どんな朝食を食わされるのだろうか?
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