カテリーナの告白

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 セルゲイは今度は、17歳のカテリーナを想像しようとした。より生命力に溢れて、バラ色の頬をした、そしてその年頃に特有の、研ぎ澄まされた感受性を湛えた何ものかであったに違いない。  カテリーナは続ける。  「私はある夜、ニコライ様をも交えての夕食会に招かれました。  すばらしいお料理でしたが、私は喉がつかえて、食が進みません。もっぱら奥様がお話になり、ニコライ様は無口でした。私をニコライ様に紹介したいというお気持ちだったのでしょう、奥様は私の家柄の良さを褒めます。そして、この私のことも『仲のよいお友達』と紹介しました。それは、今度社交界にデビューする少女に対する礼儀であったかもしれません。ああ、社交界! あれほどに憧れたこの響きも、そのとき私の中では色あせてしまっていました。それよりも、それよりも。社交界の殿方が私に浴びせるであろう賛辞など、今はどうだっていいのです。私は、ニコライ様がこの私に目を向けてくだされば十分なのです。  たったこれだけの願いさえ、叶わぬ夢なのでしょうか」  カテリーナは言葉を切った。セルゲイは今ではすっかり彼女の話に聞き入っていた。しかしそれは、かつて我が家で起こった出来事としてではなく、どこか他人の家での、いや夢の中の場面のようにも思われた。  
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