カテリーナの告白

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 それは、私への感謝を込めた言葉だったのかもしれません。でも、そのとき私は、自分が侮辱されたような、自分がどこにでもいる知り合いの少女にすぎないことを突き付けられたような心地がして、目の前が真っ暗になりました。まるで地に叩きつけられたかのように、私は全身がわななきました。  そこへ奥様が召使に伴われて、駆け付けていらっしゃいました。  『まあ、カテリーナさん、よくいらっしゃいましたわ。私、もうすぐ御用が済みますから、そうしたらすぐに参りますわ。すみませんが待っていてくださいね』  私にそういった後、夫のニコライ様の方を向いて、にっこりと目で挨拶されました。その瞬間、私はこのご夫婦が愛し合っていること、それは紛れもない事実だということをすっかり見抜いてしまったのでございます。  私は、奥様のお話に……私の期待しているニコライ様の話題があまり出ないことに気づいていて、実はこの方たちは不仲なのではないか、そんなことまで期待していたのでした。  けれど、それは誤りだったのです。そこには、私のような他人が入り込む隙もないほどの、深い情愛と強いきずながあったからということなのです。  あの一瞬の二人の表情に、私はそれをいやというほど見てとることが出来ました。私はもはや、立っていることさえ危ういほどに身体から力が抜けてしまっていました。
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