カテリーナの告白

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 「そのお手紙は出されたのですか」  セルゲイはやや先走って尋ねた。この不思議な話の顛末を、早く知りたい気分になっていた。不思議な話。セルゲイにとってはそうだったのだ。  「ええ、私の気持ちを、そのありったけをしたためるのは、それはそれは大変なことでした。私は何枚も紙を無駄にしましたわ。それでも、一晩寝ずに、とうとう手紙を書き上げたのです。そしてそれを、下女に託したのです」  「それから、あなたはどうされたのですか」  「私は待ちました。これまでのように、あなたのお家にうかがい、奥様の話し相手になり、あなたと遊び戯れながら……胸は灼けるようでしたが、必死に押し隠して。そして自室にいるときは、今は癒えてしまった自分の手の傷跡へ、何度も何度もそっと口づけをしました。まるでそれが、何かのおまじないにでもなるかのように」
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