カテリーナの告白

18/19
36人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
 そのあと、私は自分も死ぬつもりだったのです。そのつもりで家に戻りました。けれど、そこに下女が現れました。彼女は紙のように真っ白で、怯えたような表情を浮かべています。  『お嬢さま、お許しくださいまし。私は、どうしてもあの手紙をお隣のあの方にお渡しすることが出来ませんでした。お嬢さまの名誉のために。思い余って、私はそれを奥様にお渡ししたのです』  私はその場に崩れ落ちました。母に手紙を渡したのは、あの方ではなかった。この侍女がしたことで、ニコライ様は一切をご存じなかったのです。それなのに、私は、何ということをしてしまったのでしょう。  私はそのまま、気を失ってしまいました。そして長い長い間、病に伏せることになったのでした。そのまま私は別荘地を離れ、自宅の屋敷に連れ戻されました。あとのことは、未だによく知らないのでございます。  それでも、私は、恐ろしい罪の意識よりも、だんだん、あの方を自分のものにできた喜びの方を強く覚えるようになっていったのでした。  あの方のことを思うだけで今も幸せで胸がいっぱいになります。  この幸せのために、私は生きることにしたのでした」
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!