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突然の訪問をカテリーナはことのほか喜んでいるようであった。
この婦人は、パーティーに顔を出すこともまれになっていたのだが、それでも噂は流れ、セルゲイでさえ、彼女が30代も半ばを過ぎた今まで独身を貫き通し、両親の亡き後も自宅にひっそりと暮らしているという一風変わった女性であることを知っていた。ただ家柄は古く、その血は決して卑しくはない。
家に入ると、調えられ小ざっぱりとした部屋は、飾らない上品さがあった。セルゲイにはそれは好ましいものに思えた。実際家の彼の家とはまた違った趣に、興を惹かれもした。
下女のアーニャがサモワールに湯を沸かすと、カテリーナはすぐに下がるよう命じた。アーニャは礼儀正しく退いた。
そうして二人きりになったところで出てきたのが、あの言葉だったのである。
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