カテリーナの告白

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 あの夏、私は別荘につくと、新しいお友達を探そうと思っていたの。それで、隣のお庭を覗いたのだったわ。お庭には素敵な木々が感じよく植えられていて、その合間から私は盗み見をしたの。すると、紫色のドレスを着た貴婦人が、坊やを連れて出ていらっしゃいました。そう、その坊やはあなたです」  セルゲイは苦笑した。  「そう、あなたはとてもきれいなお子さんだったのよ。そしてあなたのお母様も。ああ、のちに私がしたことを考えると、本当に申し訳ない。お母様はお元気でらっしゃるのでしょう?」  「ええ、おかげさまで」  カテリーナは構わず続けた。  「そのうちに、陽が傾いて、空の金色が地平線に消えていくころ、あなたのお父様が現れたのです。ちょうどお仕事のお休みをとって、妻と子供に会いに、週末に駆け付けたようなあんばいでした。あの方の豊かな金髪が、残照に映えて、とても美しかった。私はその光景にいつしか目が釘付けになっていたのです。やがてあなたのお母様は、あなたを促して、屋内に入っていかれました。そして、あの方は、お庭の点検をするような様子で歩きはじめました。  私は今さらそこを動くこともできず、彼が歩くのを眺めていました。彼は草木に邪魔されて、ここに私がいることにまだ気づいてはいらっしゃらないようでした。私は動くに動けないまま、だんだん近づいてくるあの方のお顔を正面から見ました。そして、恋に落ちたのです」
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