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「――はぁ、はぁ……」  息を切らして、膝を付いた。周囲は、深い闇に覆われている。闇雲に走り過ぎて、あまりにも遠くまで来てしまった。それでも、壁は続いている。  それに、もしこの場所で人間を襲うような敵に出会したら、到底逃げる体力など残っていない。 「疲れた……」  見えない壁に背を預け、下肢を投げ出した。乱れた呼吸が収まるにつれ、急激に身体が冷えてきた。 「星1つも無いのか……」  虚空を見上げて、溜め息を吐く。ベッタリと重い漆黒の空間には、月はおろか何の光も見えない。  やっぱり、彗星が何らかの禍をもたらしたのだろうか。  地球に、僕に、何が起こったのか分からないまま、こんな場所で独り果てるのかと思うと悔しくて、ひたすら悲しい。  もう一度大きく息を吐いて、瞼を閉じた。明るくなったら、足跡を辿ろう。運がよければ、アパートに帰れるかもしれない。でも――帰って、どんな明日が待つというのだろう。  不意に、皮肉めいた嗤いが口の端に浮かんだ。  絶望って、こんな感じなのだろうか――。 -*-*-*-  予想より早かったですね、博士。  ううむ。仕方ない。『(ガイド)』の投入に移りたまえ。  えっ、大丈夫でしょうか? かなり不安定かと思われますが。  やむを得ん。原型(プロトタイプ)になり得るか否か、遠からず見極めねばならんのだ。  では、フェーズ2を省略して、ただちにフェーズ3に移ります。  うむ。彼はクリアするだろうかね。もう複製(デフォルト)は足りてるんだがな……。
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