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 見慣れた空間が、目の前にある。  ベッドから身を起こした僕は、若葉色のカーテンの隙間から漏れる柔らかい光に、瞬きした。 「彗星……どうなったんだ?」  頭がぼんやりしている。シーツを捲ると、パジャマ代わりのTシャツと短パン姿。いつ着替えたのか、分からない。  暫く、ベッドの上で記憶の尻尾をたぐり寄せようとする。  浜辺で、サークルの仲間と居て――鮮やかな光が――あれは……花火、か?  記憶というよりは、イメージが断片的に転がっている。闇に発光する橙や青白い色、ざらついた砂の感触、耳奥でリフレインする――穏やかな波音。  真っ直ぐ帰って来たのだろうか。だとしたら、テントを畳んだり、誰の車に乗ったとか――当然ある筈の帰りの記憶が、まるで無い。仲間の誰かが運んでくれたとしたら、記憶を無くす程、僕は何をやらかしたんだ?  ボサボサの髪を掻きながら、違和感を覚える。 「……大体」  今、何時なんだよ。  ベッド周りを見回し、スマホを探す。  ラグマットの上のローテーブルの上に、長方形の板が見えた。  ――ツッ?!  ベッドを降りて立ち上がった。途端、キンと耳鳴りがして――激しい目眩に襲われた。
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