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 頬に冷たい感触がある。視界が仄暗い。どうやら、ベッド脇のフローリングに伸びていたらしい。  身体を起こして、やたらと空腹なことに気付いたが、まずはスマホだ。 「嘘だろ」  テーブルまで這って掴んだスマホは、液晶画面がバキバキにひび割れていた。当然、電源は入らない。  参った。これじゃ、何があったのか訊くことが出来ない。連絡手段は、スマホだけなのに。 「とりあえず、テレビ……ニュースやってるだろ」  独り言は、不安の現れ。だって、何か変だ。この部屋はアパートの1階。上の階に住む会社員のおっさんや、隣の部屋の住人とか、何かしらの生活音が聞こえてくる筈なのに。静か過ぎる――。 「おい、何で? ちょっと勘弁してくれ」  リモコンが見当たらないので、直接画面の電源ボタンを押すものの、うんともすんとも反応が無い。間近で覗く黒い画面に、眉をひそめて強張った自分の顔が薄く映る。  情報収集手段を失った。  混乱する頭を振って、今度はゆっくり立ち上がる。  ベランダのカーテンに手を掛けて、少しだけ覗く。 「どういうことだよ……!」  見慣れた隣家の白壁は無く、濃淡すら無い深い闇が、ベッタリとガラスの向こうに張り付いているだけだ。訳が分からない。  膨れ上がる不安が恐怖に変わる前に、震える手でカーテンを閉めた。
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