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ー2ー
頬に冷たい感触がある。視界が仄暗い。どうやら、ベッド脇のフローリングに伸びていたらしい。
身体を起こして、やたらと空腹なことに気付いたが、まずはスマホだ。
「嘘だろ」
テーブルまで這って掴んだスマホは、液晶画面がバキバキにひび割れていた。当然、電源は入らない。
参った。これじゃ、何があったのか訊くことが出来ない。連絡手段は、スマホだけなのに。
「とりあえず、テレビ……ニュースやってるだろ」
独り言は、不安の現れ。だって、何か変だ。この部屋はアパートの1階。上の階に住む会社員のおっさんや、隣の部屋の住人とか、何かしらの生活音が聞こえてくる筈なのに。静か過ぎる――。
「おい、何で? ちょっと勘弁してくれ」
リモコンが見当たらないので、直接画面の電源ボタンを押すものの、うんともすんとも反応が無い。間近で覗く黒い画面に、眉をひそめて強張った自分の顔が薄く映る。
情報収集手段を失った。
混乱する頭を振って、今度はゆっくり立ち上がる。
ベランダのカーテンに手を掛けて、少しだけ覗く。
「どういうことだよ……!」
見慣れた隣家の白壁は無く、濃淡すら無い深い闇が、ベッタリとガラスの向こうに張り付いているだけだ。訳が分からない。
膨れ上がる不安が恐怖に変わる前に、震える手でカーテンを閉めた。
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