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ー4ー
水道は出る。キッチンもバスもトイレも問題ない。
給湯器が動くから、お湯も出る。でも、キッチンにあったガスコンロとレンジが無い。包丁やまな板といった調理器具も一切無い。
「留守中、誰かに盗まれた?」
不自然過ぎる。首を傾げつつ、他に無くなった物はないか確認する。後で警察に被害届を提出するなら、必要なことだ。
だったら、リストを作った方がいい。本棚に、文房具類も置いてあった筈。
「……無い」
早速、無くなっている物があった。
「ちょっと待って!」
それどころか。本棚を見て、呆然となる。テキストも、雑誌も、小説も、漫画も――ごっそり無い。
「うわああー、レイナちゃんの写真集っ! 嘘だろー!!」
静けさを絶叫が貫く。アイドルのレイナちゃんの1st写真集……直筆サイン付きの初回限定版が欲しくて、徹夜して並んだんだ! 僕の宝物なんだぞおぉ。
「うぅ……犯人、許すまじ!」
床に崩れた身体を、何とか起こす。涙を拭って、通学用のリュックからノートとペンを出す。
――あれ?
ノートが白い。パラパラ捲るが、白紙だ。
そんな訳ない。前期に受講した経済学の講義ノートだ。何も書かれていないなんて――。
慌てて、他の講義ノートも開く。
「何だよ……何が起きてるんだ……」
力無く、へたり込む。全て白紙。一文字も書かれていない。物が消えたのは、百歩譲って盗まれたのかもしれない。だけど、ノートの中身を消すって何だ? 誰に何のメリットがあるんだよ。
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