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ー6ー
文字が消えた。
部屋の中から――僕の頭の中から。
手掛かりを与える本は無く、調べるためのスマホは壊れ、情報溢れるテレビはつかない。
こんな徹底した状況が示しているのは、誰かが意図を持って奪った、ということだ。
キッチンで水を2杯飲む。冷蔵庫から鶏肉のパウチを1つ吸引して、トレーナーとジーンズに着替える。
部屋の外へ行こう。
外界がどうなったのか、危険があるのか、分からない。分からないけれど、ここに籠もっていて、何が変わるとも思えない。
――ガチャリ
ドアノブを回す。見慣れた入居者専用駐車場は無く、アスファルトの代わりに乾いた黄土色の台地が広がっていた。
ジャリ……。
一歩踏み出して、土の感触をスニーカーの底で受ける。
もう一歩進んで、振り返る。
「あぁ……」
やっぱり。少しだけ、予感はあった。2階×4部屋、8戸ある筈のアパートは、切り出されたプレハブみたいに、僕の部屋だけがポツンと存在していた。
もちろん、周囲に建物の類は、何も無い。人工物も、自然の――植物さえも。
この世界に、僕以外の人間は居るんだろうか。
意を決して、部屋に背を向ける。乾いた音を立てながら、黄土色の荒野を前進した。
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