城の事情、狼の怒り

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「確かに危険かもしれないけれど、ヨルヒコが把握しているんでしょう。きっと大丈夫よ」  ロアは城の出入り口を見つめている。重厚な木製の扉は今日も外界を遮断しており、互いに決して相容れない黒毛狼と人間にも思える。 「黒毛狼は何かあると雪の森から全員が集まって結束をするんだ。城に現れるのは兄さんの群れだし、僕達が知らない事情があるのかもしれない」  凶暴で多数の群れをなす黒毛狼が一堂に会するなど想像出来ないが、ロアは万が一黒毛狼が集まり始めているのなら危険だと真顔で忠告をする。  ロアは黒毛狼は仲間内の絆が非常に深いと語る。気性が荒いため仲間内での争いからはぐれ者が頻繁に出るが、その情報はすぐに他の群れに伝えられる。他の群れが受け入れたり、一匹狼となっても縄張りから外れた安全な餌場を教えられる。  はぐれ者を見限らないのは裏切り防止にも役立つ。黒毛狼は賢く群れを追い出された恨みから人間と協力をして戦おうとする者もいるらしい。はぐれ者を助けることは、群れを出た個体を監視下に置きいつでも招集可能なメリットがある。 「そんな話、初めて聞くわ」 「今だから話せるんだよ。僕も監視されているからね」
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