城の事情、狼の怒り

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 クラージュは踵を返すと森の奥へ消えた。危害を加えられずに済み私とハルはほっと息を吐く。 「怖いですね。百年前は黒毛狼と人間は仲が良かったのに……」 「想像出来ないわね」  ハルは仲違いの原因が分からず首を傾げロアはクラージュとの会話を気にかけた。少しの間思案をしながら雪の森を歩いていたが、野営をする場所が見つからず不安が募る。この辺りはクラージュの群れの縄張りで安全の確保が難しい。無情にも辺りが薄闇に染まり始めた頃、ロアが私の袖を咥えて引っ張る。 「ねえ、紅茶の香りがするよ」  ロアに促され香りのする方角へ向かうと木々の間から灯りが見える。誘われるように光を目指せば、大きな岩の塊が現れた。山の斜面に数十メートルはある塊で四角い光があちこちから漏れている。謎の生物にためらっているとハルが口を開いた。 「あれは人間が作った家だと思いますよ」 「家ですって? まさか」
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