城の事情、狼の怒り

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 私の言葉にロアは「大丈夫でしょ」と気楽だが何が起こるか分からない。岩壁には人が集まるばかりで私の不安は膨らむ一方だ。いっそのこと逃げてしまおうか、そう思いハルに相談しようとした時、辺りに鶴の一声が響いた。 「門を開けるんだ」  その一言に人々は静かになり、少し間を置いてから眼前の扉がゆっくりと持ち上がる。上に動く扉は今まで見たことがなく異界への入り口のように思う。私は招かれても安全なのかと悩むが、ロアが「お邪魔します」と入り、慌てて追いかけた。  背後で出入り口が閉まるとあっという間に(くわ)を持った人々に取り囲まれた。すぐに「桃色オバケがいるぞ」と指差され、ハルは「妖精です!」と反論をする。思いの外ハルの声量があり、周囲に沈黙と緊張が広がる。人々はどう対応するべきか困惑しているようだ。  私達も身動きが取れず悩んでいると人垣を分けて二十代半ばと思われる男が現れた。男は森の民の特徴である銀髪碧眼であり私の心が引き寄せられる。
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