城の事情、狼の怒り

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「僕はヨルヒコ、この城に住む“城の民”のリーダをしている。僕は森の民の末裔でね、同じ民族として危害を加えることはないから安心して欲しい」  私はヨルヒコから目が離せず同時に幻なのではと疑う。森の民は雪の森で暮らす少数民族であり、なぜ城に住んでいるのか分からない。  ヨルヒコの説明によると、彼の祖先はずいぶん前に森の民から離れ里に下りている。彼は森の民の習慣を知らないが森に感謝を捧げる両親の姿を見て育ち、血筋であることを誇りに思うと語る。  ヨルヒコの話は本当だろうか。私は瞼を何度もこするが相手が消えることはなく鼓動は早まるばかり。これは現実で森の民は私が最後の一人ではないのだ。   ヨルヒコは私が怯えているように見えたのか「すまないね」と言葉を濁す。 「君達と共にいる黒毛狼に城は被害を受けていてね。皆警戒をしているんだ」 「僕は悪いことはしないよ」  ロアのあどけない反論にヨルヒコは面食らう。確かにロアは無害なのだが黒毛狼は一般的に害獣の印象が強い。信じて貰うには時間が必要だろう。
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