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一人と一匹は楽園へ旅立つ
私達は自宅へ戻ると、籠に保温効果のある薬草を敷き詰め少女を寝かせた。少女は外傷はなく規則正しい寝息を立てておりいずれ目を覚ますだろう。私は起きるまでの間に昼食の準備を進めていく。小川で見つけた魚の死骸は寒さのため傷みが少なく全て食べられそうだ。
森の民は森との共存を掲げており、腹を満たすための狩猟や生き物へのむやみな攻撃はしない掟がある。代りに魚や野兎などの死骸を口にする習慣があり調理をする時には内蔵まで食べるのが普通だ。食用に適さない骨や毛皮は生活用品へと加工し、無駄なく使用し森への感謝を表している。
魚の香草焼きが出来上がると灰色芋を練って焼いた物と紅茶を食卓に並べて昼食となる。森の民の食事は「生きるための栄養を摂る」という意味合いが強く、基本的に毎食同じ物を食べる。自生する灰色芋と木の実を練って焼いた物は粘り気が強く少し渋い。香草と薬草をブレンドした伝統の紅茶は香り高く栄養価が高いが無味だ。
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