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ハルは事情を話すとうつむいた。私には楽園へ無事に辿り着ける自信がないように見える。
楽園は私達の住む雪の森の北側にあり、三つの山と森に囲まれ極彩色の花が咲く場所だと聞く。具体的な道は知らなくてもひたすら北へ向かえば楽園へ行けるような気がして私は思わず口を開く。
「なら私達が手伝うわ。良いでしょう、ロア」
「もちろん。リリィが行くなら僕も行くよ」
ハルが一人で楽園へ行くのは難しいが私とロアが助ければ辿り着けるだろう。北の果てに春を呼ぶ手伝いが出来るのは光栄だし、何より楽園を目指せばまだ見ぬ世界を知る良い機会になると思う。森の民としての生き方を考えるきっかけになりそうだ。
私の唐突な提案に思いの外ハルは喜び承諾をしてくれた。そうと決まれば楽園に向かう準備をしなければ。
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