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『マスター 本当に私は 戦いに勝ったのでしょうか?』
「・・・勝ったんだよ 君は 私達に勝ったんだ・・・」
老人は何度も 何度も 何度も呟く。
「君は・・・長い長い・・・長い戦いに・・・勝ったんだよ・・・」
『長い 戦い 』
「君は 私達を遥かに超えているんだよ・・・
遠い昔 私達は確かに ロボットを生み出した。
それは ロボットを人間の生活の一部とし その営みを助け 世の中を豊かにするためだった・・・
しかし時が経つにつれ・・・ロボットは人間と同等の能力を持つようになった・・・感情を読み取り 戦略を使いこなし・・・人間は 恐れた。かつて自分たちの生活をより良くするために作られたロボットが 自分たちの生活を侵していると・・・世界の頂点に君臨すべきは 自分たちだと・・・
そうしている間にも ロボットの技術はより鮮明なものになった。
やがて人間は互いを疑い合うようになった。もはや誰がロボットで 誰が人間か 分からなくなったのだよ・・・
そんな中で・・・私は君と出会った・・・。
ロボットは敵・・・そう教えられても 私達は信じられなかった。
君は 恐ろしい存在ではなく 人間と何ら変わりはなかったからだよ。
『ロボットを一体残らず駆逐する』
命令が下された時 私は 君を守らなくてはと思った・・・
一時的に戦争に勝ち 大金を手にし豪遊に明け暮れるものも 結局は 自我しか眼中になく 自ら破滅した。
あの戦争以降 財産は減り 人々は老い 勢いは廃れた・・・。
娘は遠くの地へ嫁ぎ あの頃の私と同じ歳。
妻は 病に伏せても希望を捨てず 穏やかに眠りについた。
私だって・・・ほら この通りさ・・・。
君は あの時のまま 美しい。 若い頃の妻と重ねてしまうよ 」
老人は 彼女の頬を優しく撫でる。
冷たく 固く ぎこちない動きだった。
彼女の顔は 微動だにせず老人の感触を分析する。
「人間は 欲張りすぎたんだよ・・・。
君のような 強くてたくましい存在が 次の世代を担うのかもしれないね・・・」
『私もいつか 壊れます』
「あぁ・・・しかし 私達と比べて ずっとずっと 強いんだよ・・・」
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