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intermission いたいけペットな君にヒロイン役は(EX5) ★
「この歳になって、こんなの着るとかアホか」
大樹はネクタイの形を整えつつ、独りごちる。
ネクタイといっても、着用しているのはスーツではなく高校時代のブレザーだった。
制服を着るのは、言うまでもなく高校の卒業式以来だ。自宅というプライベートな空間ではあるが、恐ろしく違和感があり恥ずかしい。
何故、このような事態になったかというと、
「着替え終わった?」
ノックもせず大樹の部屋に入ってきたのは、その元凶である誠だ。彼も同じく、ブレザーに身を包んでいた。
「あっ、終わってる終わってる!」
誠は身を寄せるなり、スマートフォンのカメラアプリを起動させる。
聞くところによると、高校時代の制服を着て写真を撮り、グループLINEなどの仲間内で見せ合うのが流行っているらしい。
帰省した際に、誠が制服を荷物に詰めていたので、気になってはいたのだ。
まさかこんなことになろうとは思わなかった。「そういえば俺も、捨てられずに取っておいてあるな」と、何も知らずに口にしてしまったのが駄目だった。
まんまと付き合わされたというわけだが、他ならぬ恋人の頼みとあっては仕方ない。
「おお、いいカンジじゃんっ」
「そうか?」
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