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しばらくすると徐々に人が集まってきて、花火が打ち上がり始める。大輪の花々が美しく咲き乱れていくさまに、二人で見入った。
ちらと隣を見れば大樹が微笑みを浮かべていて、あたたかな気持ちがまた膨らんでくる。思い返すのは、先ほど交わした誓いとも取れる言葉だった。
「幸せだなあ……」
独り言のつもりだった呟きは、どうやら大樹の耳に届いたらしい。穏やかな瞳で見つめてくるのがわかった。
ちょんと指先同士が触れ合って、こっそりと周囲に見えないように手を繋ぐ。言葉は交わさずとも、想いが伝わってくるようだった。
(ああ、本当に。当たり前のように、大樹が隣にいてくれることが……)
今が幸せか。そう訊かれたら、誠は間違いなく無垢な笑顔で肯定する。
この頭は都合よくできていて、何ということはない日常でも――特別な人がいてくれるだけで幸せに感じるのだから。
小さな幸せを一つ一つ積み重ねながら、この先もずっと二人で。
fin.
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