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「消去法で真犯人は炙り出せないってか」
俺はサスペンスドラマ風に肩をすくめて見せた。
「ええ、しかし下手人はここにいる」
亜里沙は声を潜めた。そして茶封筒から数枚の大判写真を取り出した。場所はスパシーボ!店内だ。リア充あふれる窓際を多角度から撮影している。そこに二人の姿はない。
ただ…気になる部分があった。ぼんやりとした輪郭が座席に寄りかかっている。
「高菜?! これ高菜じゃん!!」
いち早く異変に気付いたのは夏美だ。へなへなとその場にしゃがみ込む。
亜里沙は彼女の前をつかつかと往復する。
「そ、心霊写真。目は口ほどに物を言い」
ここからがサイコ探偵の本領発揮だ。亜里沙は得意の交霊術で現場付近に浮遊する霊魂たちに聞き込みした。
「八十吉さん。貴方も罪を背負うべきでしょ」
ひらりと一枚のスナップ写真が舞い落ちる。横たわる夏美の腹が膨らんでいる。そこに悲し気な高菜がオーバーラップしている。
「す、すまん! もっと早く気付くべきだった!!」
こいつは土下座しか能がないのか。
そして、事務所の机やロッカーがギシギシとざわめきはじめた。軋む音が囁きに変わっていく。
最期の会話だ。従業員通路から作業台に至るわずかな時間で全てが明らかになっていた。
「高菜ーー!! 待てったら!」
「ありえない!」
「ちょ、何も死ぬ事はないだろう!」
「死んだ方がマシだわ!」
「俺が護ってやる」
「護って貰わなくていい!」
「何でだよ! 俺が全力で守ってやる。何かあったら夏美さんであろうと容赦しない」
「そういう問題じゃないのよ!」
「どういう問題だよ? 家族だろ。話せばきっとわかる」
「貴方は何もわかってないじゃない!」
「わからず屋はお前だ」
「よく言うわ。あたしが『女嫌い』なのを知ってて!」
「もう一度言う! 好きになる様にしろ!」
「無理! あたし、絶対、むり!!」
「高菜、早まるな! やめろ!!」
どうっ、と強風が事務所に吹き荒れた。
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