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よかれと思う善意のすれちがいが生んだ不幸。高菜は勉と二人だけの家庭を築きたかったのだ。
姑も血のつながらない妹もいない新居。その為に矢島勉ただ一人に情愛を注いだ。
「なんてこった」
法廷では決して語られなかった愛憎劇をあらいざらい再現されて矢島は青ざめた。
「早く言ってよ」
ヒステリックに叫ぶ夏美。隙間風がただただ虚しい。
「お父さんが悪かった」
八十吉は相変わらず床にへばりついている。
「八十吉さん。貴方がすべきことは別居中の奥さんと寄りを戻し、高菜さんを支えてあげることでした」
「そんなコト! 出来るわけがナイデショ!!」
パン、と乾いた破裂音。夏美の平手打ちが精一杯の反論だった。
亜里沙は頬をさすりつつ、飄々と続ける。
「下界の刑法では未必の故意にも自殺幇助罪にも問えません。しかし高菜さんを殺した犯人はまぎれもなく、あなたたち」
呵責に苛まれ、悶絶する面々を横目に亜里沙はそそくさと片付け始めた。
「どーすんだよ。コレ」
俺は粗大ゴミ――屑人間の処分に困った。
「じゃあネ♪」
彼女は分厚い茶封筒を引っ掴んで幽霊の如くドロンした。
本当にどう始末すればよいのか。誰か助けてくれ。
すると虚空に筆記体が躍った。
冗談じゃねえ。バディなんざ願い下げだ。
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