St.Evilnight Saga ~永遠を誓うリング~

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 レストランに入って席につくと、早々に料理を注文する。  頼んだ赤ワインが先に出てきて、ソムリエがコルクを開けようとすると、ポンッと音を立てて勢いよくポラード神父の額目がけて飛んで行った。 「痛っ」 「す、すみませんっ!!」  ソムリエが慌てた顔をしておしぼりを差し出す。  どうやら今日は、ポラード神父にとって厄日らしいわね。 「二度あることは三度ある。あと一回、今度は何が爆ぜるのかしらね」  机に頬杖をつきながら笑って言うと、彼は「嫌な事言いますね」と息をついた。  料理があらかた出てきて、ナイフとフォークが皿の上で踊る。口いっぱいに美味しい匂いと肉汁が広がって舌鼓を打つ。 「このロールキャベツ、美味しいわ」  こういう普通の食べ物でも美味しいと感じるのはありがたいわね。  いつも人間の血が手に入るわけじゃないから、普段は代用品で補っているけれど。  カランッと店のドアベルが鳴って、ガラの悪い男が3人入ってきた。  嫌だわ。折角の食事が不味くなるじゃない。  そう思っていると、男達が私を値踏みするようにジロジロと見ながら近づいてくる。 「ヒュ~彼~女。神父とデートしたって面白くねぇだろ?」 「俺らと楽しい夜を過ごそうぜ」  嫌な予感が当たった。折角のご飯が冷めちゃうわ。もう少し気を使って欲しいわね。  私はナイフとフォークを動かす手をそのままに、傍に立つ男達に返事をした。 「遠慮しておくわ。楽しくなさそうだから」 「そんなつれないこと言ってないでさぁ」 「絶対この神父よりも楽しめると思うぜ」  態度からして野蛮な奴らが、下僕よりも私を楽しませられるわけないじゃない。  笑っちゃうわ。 「その自信はどこから来るの?」 「そんなの見りゃ分かんだろ? こんな良い男他にいるかよ?」  ギャハハハハと品のない笑い声を上げるその行動が、頭の悪さを主張してるのよね。  相手をするのも面倒臭いけれど、美味しいご飯が冷めてしまうのは勿体ないわ。 「鏡を見たことがないのかしら? それとも、目が悪くていらっしゃるの?」 「鏡だ? そんなの毎日見てるぜ。イケてるだろ?」 「私の目には、こちらの神父様の方が顔は良く映っているけれど?」 「俺らと一緒に遊んだら、男の見方が変わるかもしれねぇぜ」 「あら。私の思う良い男の価値基準と違うみたいだわ」  パクリと、デザートのマカロンを口に入れる。甘酸っぱいイチゴのクリームが心地良い。 「価値基準?」 「私、使える下僕が欲しいのよ。ロクデナシじゃなく、私の為にあくせく働いてくれる下僕がね」  チラリとポラード神父をみると、「こんな状況で嫌味ですか」と言いたげな目を向けてきた。  男達は一瞬黙ると、次の瞬間には下品な笑い声をあげる。 「下僕だってよ」 「じゃあその神父は下僕だってか」 「下僕なら、ご主人様を守らないといけねぇよなぁ」  男は私の腕を掴んで上へと引っ張り、椅子から立たせた。  仕方ないわね。そろそろ他のお客さんにも迷惑だし、運動がてら外に連れ出そうかしら。 「高杜さん」  ポラード神父が、どうするべきかと周囲に視線を走らせる。 「ほら、早くしねぇとご主人様を連れてっちまうぞ」  立ち上がりかけたポラード神父の肩を乱暴に蹴り飛ばし、男達は私を連れて外へと出ようとする。 「(下僕。運動してくるから食べたら来なさい)」  私は小声でそう伝えると、大人しく男達と共に外へ出た。
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