3日神父に下ったものは……?

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 翌日。 「神父様、風邪でもお召しに?」  心配した表情を浮かべる美しき若い女性―― 高杜さんが帰り(ぎわ)、声をかけてくれた。 「朝から、少し(のど)が痛くて……」  まさか昨日、仮病(けびょう)を使ってロクデナシ生活に戻りたいなどと考えながら、礼拝の最中に祈っていたとは言えない。 「それは風邪の引き始めですね。生姜(しょうが)湯を飲んで、体を温めて、ゆっくりお休みになって下さい。早く治りますように」 「ありがとうございます。優しい貴女(あなた)に、神のご加護がありますように」  高杜さんは笑みを浮かべ、軽く会釈をして教会を去る。  誰もいなくなった教会の中を、ゆっくりと過ぎて行く和やかな時間……。  こんな一時にこそ、誰もが幸せを感じ、今日を精一杯生きるべきなのだ。  一人の時間が作りだす感傷的な空間を眺めていたら、身体が言う事を()かずにふらつきだす。  今日は朝から、どうにも体が(だる)い。  教えてもらった通り、生姜(しょうが)湯でも飲んで早々に休もう。  そして翌日、天罰が(くだ)ったかのように高熱が出た。  仕事はしなくて済むが、これでは自由がない。  (しゅ)は、不埒(ふらち)なことを祈った使徒(しと)たる俺を見逃しはせず、しっかりと(ばっ)したようだった。  俺を監視しているのは、教団だけではなかったのか……。 Fin.
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