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あぁ、またか。と僕は思った。
これでもう、三回目のドラゴンによる強盗殺人事件である。
だいたい月に一度は、このような事が街では起きていた。
すると隣にいた褐色肌の屈強な男が、僕に話しかけてきた。
「なぁ、あんた。……ドラゴンは何を盗んだんだ?」
「え?!……さ、さぁ?」
「なんだよ。……お前も今、来たばかりか?」
「……はい。」
つまんねえな、と呟いた男は振り向き、反対隣にいた恰幅の良い御婦人と話をする。
「あら、知らないのかい。……なんでも雑貨屋の倅が、旅商人の一団から譲って貰ったっていう、真っ赤な宝石らしいわよ。」
「あぁ、!……あの店の奥に飾ってあった物か。」
「そうそう、……あの両手に乗りきらなそうな、大きな石よ。」
盛り上がる二人から、そそくさと早足で僕は逃げていく。
ここに留まり過ぎては、面倒事に巻き込まれてしまう。
そういった事に、よく僕はすり寄られやすい運命だから。
しかし、視線を泳がせながら歩いていたので、前から男が出てくるのに、気がつくのが遅れてしまった。
ドン!!
とぶつかり、僕は尻餅をついた。
「おい、貴様、気をつけろ!!」
と相手が、怒鳴りつけてきた。急いで顔を上げて確認する。
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