一章 賢者と最初の事件

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 あぁ、またか。と僕は思った。  これでもう、三回目のドラゴンによる強盗殺人事件である。  だいたい月に一度は、このような事が街では起きていた。  すると隣にいた褐色肌の屈強な男が、僕に話しかけてきた。  「なぁ、あんた。……ドラゴンは何を盗んだんだ?」  「え?!……さ、さぁ?」  「なんだよ。……お前も今、来たばかりか?」  「……はい。」  つまんねえな、と呟いた男は振り向き、反対隣にいた恰幅の良い御婦人と話をする。  「あら、知らないのかい。……なんでも雑貨屋の倅が、旅商人の一団から譲って貰ったっていう、真っ赤な宝石らしいわよ。」  「あぁ、!……あの店の奥に飾ってあった物か。」  「そうそう、……あの両手に乗りきらなそうな、大きな石よ。」  盛り上がる二人から、そそくさと早足で僕は逃げていく。  ここに留まり過ぎては、面倒事に巻き込まれてしまう。  そういった事に、よく僕はすり寄られやすい運命だから。  しかし、視線を泳がせながら歩いていたので、前から男が出てくるのに、気がつくのが遅れてしまった。  ドン!!  とぶつかり、僕は尻餅をついた。  「おい、貴様、気をつけろ!!」  と相手が、怒鳴りつけてきた。急いで顔を上げて確認する。
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