一章 賢者と最初の事件

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 「レベッカ隊長!?」  と驚いた若い憲兵が、すぐに剣を鞘に納める。  「我らの剣は、民間の方に向ける物ではない筈です。」  「し、失礼しました。」  「気が立つのは解りますが、少し落ち着きなさい。……それと、謝る相手が違いますよ。」  それから二人は同時に頭を下げ、丁寧に謝罪をしてきた。  「私の部下が、大変に失礼な事をして申し訳ありません。」  「い、いえ。僕も……よく前を見なかったのがいけなかったので、お気になさらず……。」  「わかりました。では、我々は当初の目的に移らせてもらいます。」  と隊長さんは、抜く手も見せぬ動きで、他の憲兵達に指示を出す。  彼女の部下達も、一糸乱れずに雑貨屋の中に入ったり、聞き込みなどの調査を始めていく。  「本当に、申し訳ありませんでした。」  律儀にも、隊長さんが再び頭を下げてきた。  なんと格好いい人だと思う。  言動や姿勢のみならず、短く揃えられた金髪や整った顔などの容姿も、彼女の評価に繋がる要因であろう。  だが、彼女が顔を上げた時に、僕の顔を一瞥して、「おや、?」と首を傾げてきた。  それを見て僕は、ヤバいと思った。
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