4714人が本棚に入れています
本棚に追加
すると、俺の後ろで扉が開いた。
ガチャッ
「会長いるーー?」
この軽快な美声……、ヤツか。
とても聞き覚えのある声に、俺は苛立った。
……チッ、また厄介なのが……。
イライライライライライライライライライラ
俺が"健気です僕モード"で振り向くと、予想通りそこには彼がいた。
ーーーチャラ男会計、下田 譲(しもだ ゆずる)
緩やかなウェーブのかかった髪は、彼の甘いマスクとマッチしている。
うえ"ええええぇぇぇぇぇ
彼と目があった瞬間、俺は心の中で盛大に嘔吐した。
対する下田は俺を見て、僅かに眉をしかめる。
「うわ…、まだ会長の側をうろついてるの?」
「下田さん……。」
(よお、来たなヤリチン2号。)
「まったく。いつまで会長に付き纏うんだか……。だらしないよ、君。」
(テメェの下半身に比べればちゃんとしてるわ。)
知ってんだぞ。
お前が複数のチワワとお付き合いしてることをなぁっ!!(チワワ本人たちは知らない)
イライライライライライライライライライラ
会計の言葉を無視して、俺は俯きながら冷めた濡れタオルとシーツを抱える。
彼の前を通り過ぎようとしたら、不機嫌な声が頭上から聞こえた。
「なに無視してんの?」
ガッ!!
「!!」
突然足を引っ掛けられ、俺は身体がよろける。
背中を蹴り出されれば、身体は素直に地面へと転がった。
無様に床へ倒れる俺を見て、周りから冷やかしの笑い声が響く。
いつの間にか専用部屋にいたチワワ達までも、俺を見下ろして嘲笑っていた。
会長も笑いをこらえきれないようだ、口元に僅かな笑みがある。
イライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライラ
そのまま調子を良くした会計は、俺の頭を掴み上げ低い声でこう言った。
「お前、キモいんだよ。」
そう言って、彼らは俺に使用済みのタオルを投げつける。
「これ、片付けておいてね。」
「後片付けよろしく、平凡くーん。」
最後に残った会長は、冷たい顔でこう言った。
「分かったか、これがお前の身分なんだよ。雑用係。」
「…………………………。」
バタンッ
扉が閉まった後、俺は床に跪いたまま動きを止める。
しばらくして、俺は青臭いタオルを掴み、ゆっくりと頭から退けた。
べチャリッと気持ち悪い音がして、タオルは床に落ちる。
イライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライラ
ヌチャッ
ーーーそして掌に残る、生ぬるい嫌な感触。
ブチッ。
「…………………へぇ。」
俺の口から、とてつもなく低い声が溢れた。
最初のコメントを投稿しよう!