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「お主にそう言われては最早、拙者が金の工面をしようとしても連木で腹を切るようなもので徒労に終わり虚しくなるばかりか。」
「だからさ、虚しさを絶つ意味でもお主はよい死に時を迎えたんだよ。就いては実は拙者、近頃、葉隠れなる書物を読んだんだが、お主も読めば、定めし武士道とは死ぬことと見つけたりと悟ることだろうよ。今のお主に凱切な成句なんだからな。」
「・・・」
「まあ、金をやらん代わりにこれをやるから読んでみたまえ。」
権左衛門は征雪に葉隠れの書を渡した後、じゃあ、失敬と言うのみで無情にも去って行った。
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