浪人

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 江戸の場末にある裏長屋。そこの一室を借りて所謂その日暮らしをしておる浪人がおった。  名を征雪と言って不器用じゃからどんな仕事も上手くいかず到頭、盗みを働きよったが、それもしくじって悪事千里を走るで噂が広まって今では浪人連中だけでなく一般庶民にまで蔑んだ目で見られるようになってしもうた。  で、征雪は自棄酒を毎晩のようにあおっておったが、酒も金も尽き、利鎌の月が異様に光り冴えわたる晩のこと、自宅で途方に暮れておると、浪人仲間の中でも親友の権左衛門の訪問を受けた。
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