私の好みと貴方の好み

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優奈は偏頭痛もちである。 いつ痛くなるか分からないから 職場のロッカーには いつも偏頭痛の薬を常備している。 同僚の未来も同じだ。 今日もこめかみを押さえながら 「優奈、持ってない?」 未来が辛そうに聞いてきた。 「あっ、持ってるよー、 痛いんだね。分かる、分かるその痛み」 優奈はいつものように、差し出した。 「私は、いつもAを飲んでるんだよね」 優奈の薬を受け取りながら 未来は必ずこれを言う。 「ごめん、私はBなんだ」 優奈も毎回同じフレーズを言う。 痛みを共有できるのはいいとして 毎回、Aをアピールしてくることに いつも悶々としていた。 この会話、何回目だろう。 最近、優奈は言いたくなる。 私は、私の好みでBを買ってるの。 Aが良かったら自分で買って常備したら? でも、偏頭痛の辛さを 誰よりも知っているから 優奈はそれを未来に言えない。 痛みに耐えてる未来にその言葉を 投げることができないのだ。 優奈はそういう性格だ。 でも、考えてみると 常に同じシチュエーション。 ずーっと言えないじゃん!! 未来、自分で気づいてくれー。 自分で買って常備してくれー。 私に毎回要求してこないでー! 優奈は心の中で叫んだ! この心の声が音声になる日は 来るのだろうか。
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