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プロローグ:同期の男の隠れた趣味とは
昼間だというのにカーテンの引かれたワンルームで、大橋智之の目の前に広がる光景は、今までの自分の経験からは予想できないものだった。
「はぁ……ッ…気持ち、いい……んんっ」
そして目の前で、会社の同期である望月湊が、職場で見慣れない黒縁眼鏡をかけ、全裸で膝を広げ、ローションまみれになった尻の穴に自らの指を突っ込み、今、固定されたスマホのカメラの前で、快感のままに喘いでいる。あまり整えられていない重めの前髪が時々、眼鏡の上に覆いかぶさり、こめかみに近い髪の束は、額の汗で張り付いていた。
動画編集について教えてほしいと頼まれ、一人暮らしの望月の家に来たまではよかった。それが、どんな動画なのかを聞かなかった自分も悪い。けれど、動画と言えば、ゲーム実況、動物モノ、日常的なモノといった雑多なものを思い浮かべるのが普通ではないか。まさか、その動画が男の自慰行為を撮影したものだなんて、誰が思うだろうか。
「ふっ、……んんっ……」
いきなりこんなものを見せられたら、聞いていないと憤慨していいだろう。けれど、大橋は、カメラに向かって黙々と自慰行為をする望月を凝視しながら、ただ唖然としていた。
会社ではあまり目立つことがなく、無口でおとなしい望月が、撮影のためなのか、全身の毛を剃り、生まれたままの姿で、快感に任せて腰を振る、そんな初めて見る望月の姿に、言葉を失っていた。
――なんで、どうして、こんなことになっているんだ。
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