01:やるからには本気で

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「おつかれさん」 「はぁ……はぁ…」  さきほどの撮影に比べると、ずいぶんと疲弊しているように見えるのは、きっとさっきよりも興奮したのだろう。 「見違えるほど良くなったと思うぜ」  大橋は傍らのティッシュ箱を望月の顔の前に置き、スマホもそばにあったガラステーブルの上に置いた。 「下着汚れちまったな。でも全裸よりも下着姿のほうが、いやらしかった」  それだけ告げると、大橋はよいしょ、と立ち上がった。 「大橋くん?」 「あー、ちょっとトイレ」  デニムのポッケに手をつっこみ、大橋は涼し気な顔で浴室の隣にあった扉がトイレで間違いないだろうと、軽い足取りで向かう。扉を開け、そのまま便座に座り、はぁーとため息をついた。 「おいおい、おまえは、男で勃ってんじゃねぇよ……」  デニムの中で隆起した自分の下半身に喝を入れる。動画の途中で、嫌な予感はした。さっき、男のオナニーなんて興味ないと言ったのは間違いなく自分だ。もとから、自分は男の体に性的な興味はない。ちゃんとおっぱいが好きだし、セックスだって女としたい。今までの恋愛対象も女という、いたって健全な成人男子だ。それなのに、今の望月のオナニーには明らかに興奮してしまった。だからといって、何をしたいというわけではないが、あれならそのままオカズにして、射精までイケてしまうような気もする。  最初見たときは、そんな気持ちにはならなかったのに、自分に見つめられ恥ずかしそうに自慰行為をする望月にひどく興奮した。今回は明らかに、望月がいやらしく映ったのだ。 「相手は総務の望月……総務の望月……望月だ…」  脳内にこびりついた妖艶でいやらしい望月の姿を、自分がよく知る、スーツ姿で無表情の望月で上書きし、なんとか沈静化させた。
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