02:人気投稿者の条件

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02:人気投稿者の条件

 週が明けて月曜日、大橋は喫煙室にいた。タバコを吸いながら、スマホの画面を見つめ、すっかり増えてしまった投稿サイトのブックマークの数にため息をつく。しかもブックマークしている動画は全部男性が投稿主の動画だ。 「こんなの見られたら、絶対にゲイだと思われるじゃん……」  大橋は、あれからアダルトカテゴリーを検索し、"ソウ"のライバルになりそうなアカウントや動画の閲覧数の多い人気アカウントを徹底的に調べて鑑賞し、参考になりそうな動画を、ブックマークしたのだ。 「つーか、みんな下半身出しすぎだろ……他にやることねぇのかよ」  調べてみると、自慰行為を動画にして投稿しているのは、男性だけでなく女性も多かった。さすがに無修正だと運営から即削除されてしまうようだが、その削除されないギリギリで、どれだけいやらしいと思える動画を投稿できるか、というのも面白みのひとつになっているようだ。他には、いやらしさ、エロさ、に加え、トークの上手な人間もいて、自分の持つ特技を活かして閲覧数を伸ばしている。 「でも、望月も負けてないんだよな……」  もとから男の裸に興味があるわけではないせいか、望月と同じように、自慰行為を公開している男性の動画を見たところで大橋の下半身は特に反応を示さなかった。もう、女性に興奮できなくなるのではないかと焦ったが、そういうわけでなく安堵した。たくさんの動画を閲覧して、分析したこともあり、大橋の中で人気の動画については、傾向が掴めた気がする。 「なーに、難しい顔でスマホ見てんの?」 「うわ!」  ちょうど、アダルトカテゴリーの本日のランキングを見ようとしていたところに、背後から突然話しかけられ、大橋は思わず声をあげる。声をかけてきたのは、同じく同期で営業の小島だった。 「なんだよ、エロサイトでも見てたのか?」 「突然、声かけるなって言ってんだよ」  慌てた大橋を高らかに笑う小島に、まさか本当にそうだとは言いにくい。 「そういえばおまえ、こないだの同期会、望月ちゃんと楽しそうに話してたな」 「そうかぁ?」  その後、オナニーを見せてもらう関係になったと言ったら、小島はどんな顔をするのやら。 「あんなに楽しそうな望月ちゃん見たことなかったからさ、あいつも笑うんだなってみんなでおまえら見ながら話してたんだぜ」 「酒の肴にしやがって」  それは自分も思う。望月と話をして初めて、天然で純真無垢な一面も知ったし、笑った顔は小動物みたいにかわいいなんて、社内では誰も知らないのではないだろうか。
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