02:人気投稿者の条件

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 フロアには喫煙室の隣に、自販機がまとめて設置してある休憩スペースがある。一番目立たない奥まで進み、改めて望月に向き直った。 「で、どうした? 動画のことか?」  望月はジャケットのポケットからスマホを取り出して、大橋に画面を見せた。それは、大橋が喫煙室で見ようとしていた、アダルトカテゴリーの本日のランキングだった。 「昨日の夜、大橋くんに撮影してもらった動画を投稿したんだ……そしたら、ここ、見て」 「え、マジ? デイリーで一位?」  見間違いじゃないかとスマホの画面を指差す望月の手ごと、自分の目にひきよせる。間違いではなかった。"ソウ"の動画がデイリーの一位の枠におさまっていた。 「ランキングってお昼の十二時更新だから、さっき、休憩中に見たんだ。その、メールすればよかったんだけど、直接、お礼を言いたくて……」 「すっげぇ。コメントもついてるじゃん。これ、"すごくエッチだったよ"って、なんか女のアカウントじゃね? お気に入りも増えてるな」  投稿してすぐに閲覧数が急上昇したのだろう。大橋はごく自然に望月のスマホの画面を、タップしたり、スクロールしたりして、間違いないことを確認した。 「いや、みんなようやくおまえに気づいたってことさ。これでスタートラインに立ったって感じだな。この勢いでいこうぜ」 「う、うん」  望月は大きく頷きながら、ぎゅっと両手を握りしめている。仕草がいちいち、かわいい。 「よし、じゃあこの勢いですぐに新しい動画を撮影したほうがいいな。おまえ、今週末は空いてるか?」 「空いてる!」 「よし、じゃ土日が仕事で潰れないように、俺も、平日頑張るわ」 「僕は……何したらいいかな」 「おまえは体を大事にしとけ。傷とか作るなよ」 「そ、そうだよね……気をつける」 「ああ、そうしろ。綺麗な体してんだから」  えっ、と小さく驚いた望月はそのまま目を反らした。心なしか、顔が赤くなってる気がする。 「そんなこと、ないと思うけど……」 「おまえは男にしては綺麗すぎるくらいだ。もっと自信もっていいんだよ」 「そ、そう?」 「おう」  褒めてるのに照れながらも半信半疑な表情を見せているところも、かわいく感じて、思わず、ちょうど肩の位置くらいの望月の頭を撫でる。本当に望月は自分よりも、小さいのだと再認識する。そういえば体も細くて小柄で、きっと抱き締めたら大橋の腕の中に入ってしまうくらいの小ささだろう。 「大橋くん?」 「あ、いや、なんでもない」  声をかけられ慌てて目を逸らす。ごく自然に望月を抱きしめたら、と考えてしまった自分が急に恥ずかしくなった。ついでに望月で勃ったことまで、ついでに思い出してしまい、なんとも言えない気持ちになる。脳内で必死に、望月は男だ。そして俺はノーマルでおっぱい大好きな普通の男だ、と唱え、気を紛らわせる。 「望月」  声のする方を向けば、そこには眼鏡姿の細身の男が立っている。たしか望月の上司で総務課の課長である太田だ。
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