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「望月ちゃんは、もともと太田課長のお気に入りだからな。素直で従順で、仕事ができる」
「それにしても、なんか近くねぇか」
「あれ? おまえ知らないの。太田課長ってそっちもイケる。いや、むしろそっちが本命」
「何それ、もしかしてゲイ?」
「ああ。奥さんと別れたのは間男を家に連れ込んでたって噂があったり、なかったり」
「すげぇな。もしかして望月狙われてんの?」
それなら大橋のことを敵視してきたようなあの目線は、独占欲の現れなのだろうか。
「もちろん噂だけどね。ほら、望月ちゃんってなんか男でも抱けそうな中性的な感じだと思わないか? 実は処女じゃないかもよ?」
「おいおい、やめようぜ。知ってる男同士でそういうの想像したくねぇわ」
それだけじゃない。実際、望月は自慰行為の際に、通常触れることがない後ろの穴を使っていた。それはいわゆる男性同士の経験があるように思えてしまう。まさか、太田が教えたなんてことは、ないだろうな。
「まぁ、大橋は健全なリア充だもんな。世の中にはそういう関係もあるってことよ」
小島の言う、そういう関係というのは男性同士の恋愛という意味なのだろう。もちろんそれ自体を否定するつもりはない。ただ望月が誰かとそういう関係になった過去があったとすれば、胸がざわつく。
「それは、なんか嫌だな」
「え? ああ、おまえは無理そうだよな」
この感情はなんだろう。男同士で恋愛することへの嫌悪感というより、望月が誰かとそんな関係になることは単純に嫌だと感じてしまうのはなぜなのだろうか。
ついさっき望月と分かち合ったランキング一位の喜びが、遠いことのように思えた。
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