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01:やるからには本気で
「ああッ……イ…クッ…!」
非日常な光景なはずなのに、元から好奇心旺盛な大橋の胸は躍った。
ベッドにもたれ、床に座っている望月は大きく上背を仰け反らし、自らの尻の穴への刺激だけで、宙に精液を吐き上げた。飛び散った白い液は、望月の腹部に落下し、男にしては色白な肌色を汚す。しばらく、はぁはぁと息を荒げたまま、固定されているスマホのカメラを見つめている。
その間も、大橋はその光景をソファに座って間近で見ていた。他人の射精どころか、自分と同じ男性の自慰行為を見たのも初めてだった。アダルトビデオだって女優に目がいく。わざわざ男優を見ることはない。けれど、望月に限ってはそのへんのアダルト男優なんかに比べても体が綺麗で、見ている分には気持ち悪さを感じさせなかった。
やっと息が整ってきたのか、望月は自分の方に向けられていたスマホに手を伸ばす。おそらく撮影を止めたのだろう。
「どうだった?」
「どうって……」
さっきまで自慰行為に没頭していて、大橋の存在なんて見向きもしなかったのに、急に声をかけられ、我に返る。
望月はベッドの脇にあったティッシュを数枚抜き取ると、それで自分の汚れた腹部を拭いている。急に現実的な後処理の光景を見せられ、これはアダルトビデオでもなんでもなく、目の前で行われていた行為なのだと再認識する。
「僕ね、一年くらい前からサイトに動画を投稿してるんだ」
もちろんそんな説明は事前にない。「じゃあ、撮影始めるね」とひとこと大橋に声をかけたと思ったら、いきなり服を脱いで全裸になり、三脚で固定したスマホのカメラを起動したその前に座り、『こんばんは、ソウです。よろしくおねがいします』と淡々と挨拶をしたあとで、いきなり自慰行為を始めたのだから。
「つーか、おまえの言ってた動画ってコレ?」
「うん。動画に興味があるって話を会社の人にしたら、動画を投稿するサイトがあることを教えてもらって、なんだか楽しそうだなって思ったんだ。で、そのサイトのランキングで実際、一人でやってるところを動画にしてる人を見て、これなら僕でも撮影できるかなって」
「いやいや、ランキングに載る動画って言っても、いろいろあるだろ? よりによってなんで、オナニーなんだよ」
普通なら絶対に選ばなさそうな題材だと思うのだが。
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