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「その、黒丸さんがタチとか、僕がネコってなんのこと?」
「ああ、男同士は、挿れるほうがタチ、挿れられるほうがネコって言うんだって」
「なるほど、それで僕がネコ……」
納得したような望月の顔に、大橋はようやく忘れかけていた、望月の後ろの穴のことを思い出すが、なんとかして胸の奥に追いやろうと試みる。
望月がマグカップにインスタントコーヒーを入れて、お湯を注ぐと部屋中にコーヒーの香ばしい匂いが広がった。望月は、ベッドの脇に置いてあるサイドテーブルに大橋と自分の分のマグカップを二つ置いて、大橋の隣に座る。
「と、俺は分析したんだが、これはあくまで提案だから、どうするかは、おまえが決め……」
「やる」
大橋が言い終わらないうちに、望月は返事をしていて、そのまなざしは真剣だった。
「あ、やるって言っていいのか、わかんないんだけど、大橋くんには声で出演してもらうわけだから、お願いしますってことでいいのかな」
あまりにも気持ちが先行して即答してしまったらしく、しどろもどろになっている。けれど、自分の提案を快く受け入れてくれたのはありがたい。
「よし。快諾してくれたってことなら、俺は視聴者の代表って感じで、ソウのいいところを引き出せるように頑張るわ」
「お願いします!」
そう言いながら大橋に深々と頭を下げるところは、まだ会社で見かける望月だな、と実感する。このあとは恥ずかしがり屋で、いやらしいソウを動画に収めなければ。
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