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「そんなに興奮したんだ……」
わざと呆れたような口調で呟くと、眼鏡の奥の望月の瞳が、ふるふると震えて潤んでいる。体が気持ち以上に反応してしまったことを改めて指摘され、晒されることでますます羞恥が煽れているのだろうか。こうしたプレイは男女のAVでよく見かけるが、望月には効果が絶大だったようだ。
そして大橋もまた、自分の言葉によって望月の快楽が増していくことを実感して、ごくりと喉を鳴らす。このあとの展開によっては自分もまた、自分の中の欲望と戦うことになるのだ。
「見せてくれたご褒美。直に触っていいよ」
ようやく直接触ることを許された望月は再び下着の中に手を入れ、すっかり硬さを帯びたそれを握り込んでゆっくりと上下に扱く。そのたびに、はぁ、と吐息を漏らし、部屋には、ぐちゅっぐちゅっと粘液が交わる音が響く。
「そこも、すっかりかたくして……上下に扱くのが好き?」
望月は大橋の言葉に、ゆっくりと頷く。その姿をじっと見つめられながらも、扱く手は止まらない。普段は性に関することを何ひとつ想像させない望月が、欲望に対して貪欲であるところが好きだ。そしてそれを知っているのは自分だけだという優越感がたまらない。
徐々に気持ちが高揚しているように見える望月だったが、先程から大橋が気になっているのは、ずっと望月の太ももの上で、何かを迷っているように軽く握ったり開いたりしている左手の存在だ。
「左手、どうかした?」
もちろんそれを大橋が見逃すはずがない。
「なんでも……ない」
何事もない返事をしていても、望月の瞳は震えている。
「それ、どうしたいの?」
もちろん望月の気持ちは手に取るようにわかっていた。今までの動画でも望月が自慰行為をするときは、右手で何をして、左手で何をしていたかは、当然知っている。
「なんでも……ない」
「ふーん、それなら左手はそのまま使わないけどいい?」
望月は、うっ、と小さく呻いた。大橋の予想では、望月は左手を使わないとイケない体になっている。それはフィニッシュに近づくにつれて、絶対に必要になってくるのだ。
「左手……使いたいです」
もうごまかせないと察したのか、望月は早々に白旗を上げた。けれど簡単に使わせてやるほど、優しくはしない。
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