01:やるからには本気で

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「僕、特に面白いこととか、何も浮かばなかったんだけど、オナニーなら毎日してるし」 「は? おまえ毎日してんの?」 「え、毎日するもんじゃないの?」 「あ、いや、それはまあいいけど……」  それは人の習慣なので、あまり触れない方がいいかなと気を遣ってみたが、望月はキョトンと目を丸くしている。  もとから望月とは、営業職の自分とは働いているフロアも違い、同期である以外に接点がなく、あまり話したことがなかった。職場では任された総務の仕事を淡々とこなす、どちらかといえば真面目で物静かな人間だと思っていたが、どうやら少し天然な一面があるようだ。 「しかし、まさかオナニーの動画とはな……」 「ダメだった?」  よほど驚いたのか、望月は畳んであった服に向かって伸ばした手をわざわざ止めて、聞き返してきた。こげ茶色のくりくりと丸い黒目をより一層丸くしている。 「いや、ダメっていうか……」  もっとそれ以前の問題なのだが、説明したら理解してもらえるだろうか。 「で、その眼鏡は顔バレしないようにってことだよな」 「うん、そう! 下手にマスクとかするほうがバレちゃうかなって思って!」 「全身の毛まで剃って?」 「うん……陰毛は映してはいけないってどこかのサイトで見たから。もともと体毛は薄いほうだったし」   だからって全部剃る発想には至らないと思うが、そこにも触れないでおく。  しかし全身毛のない、生まれたままの姿の望月は男にしては色白で肌が綺麗だった。本人は無自覚だろうけれど、観賞用の被写体としては良い体をしていると思う。 「でもなぁ、ちょっとなぁ」 「ちょっと、どうかした?」  望月は大橋に向かって首をかしげる。 「なぁ、他にも投稿した動画あるんだろ? 見せろよ」 「ええっ、ここで見るの? あとでアカウント教えるから家で見てよ」 「なんだよ、恥ずかしいのか? おまえ、いま、ここでヤッてただろうが」 「いや、なんか改めて知り合いに動画を見られてるって思うと恥ずかしいっていうか」  実際に見られるのは平気だけれど、動画として見られることに抵抗があるという望月の思考は理解できないが、今までの望月に抱いていたイメージとのギャップがだんだん面白く感じてくる。確か、同期といっても望月は専門学校卒だったはずなので、二歳年下の二十二歳だ。少し、子供っぽい発想な一面は若さゆえなのかもしれない。
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