05:天然不思議ちゃんの行動の謎

2/6

709人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ
「ごめん。でも大橋くんを巻き込んだのは僕だから」 「一番におまえだろうが! で、太田はなんて言ってきたんだ」 「動画でされてるようなことしてあげるから、アカウントは消せって」 「は? 脅迫じゃねぇか」  アダルト系コンテンツは脅迫や脅しの対象になりやすい。金銭を要求する事件も起きているが、泣き寝入りする人間が多いのも実情だ。  大橋は、小島が言っていた、太田がもともとそっちの人間だということや、望月と親密そうに話していたということを唐突に思い出した。 「確認するけど、おまえは太田のことそういう対象では見てないってことでいいか?」  望月は、大橋の目を見て、しっかりと頷いた。 「それで、おまえが慌ててアカウント消した理由はわかった。太田には間違いなくバレたのか? まだ太田は疑っているだけじゃないのか?」 「黒丸って実況者を知ってるかと聞かれた」 「は?」 「週末、黒丸と話していたのは、おまえか?と聞かれて」 「ちょっと待て」  まさか漏らしたのは、黒丸だと言うのか? 太田は黒丸とどこで繋がってる? 「僕、動揺しちゃって、そしたら『まさかソウがおまえだったとはな』って言われて、もうこれは無理だってなっちゃって」  望月の話から察するに、太田は黒丸とソウが撮影をしていたことを知っている。その声から、望月だと気づいた。ということはソウの姿を見ていたわけではない。それなら、望月に対して『おまえか?』なんて確認はしない。なんだ。どういうことなんだ。  大橋は、あらゆる方向から推測を始める。 「ごめん……僕がコラボなんか引き受けたせいで……」 「そんなことはどうだっていい。今はこれからの対策を考えよう」  狼狽える望月の肩を大橋は自然と抱いた。しかし、はっ、と気づき、その手を引く。 「大橋、くん?」 「悪い。こういうのは、もうやめなきゃな」  今まで自然にしていたことだけれど、ただの会社の同僚である今は、望月に馴れ馴れしくしてはいけない。そう自分を戒めた。 「やっぱり、僕が、黒丸くんとのコラボ引き受けたこと、まだ怒ってるんだ」 「その話はもう終わっただろ」 「でもあのときは、僕が、そう返事するしかなかったでしょ!」  望月が声を荒げる。 「なんでだよ」 「だって、僕だけの大橋くんじゃないんだもん!」 「は、はぁ?」  まったく想像していなかった答えに、思わず、まぬけな声を漏らしてしまう。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

709人が本棚に入れています
本棚に追加