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「ごめん。でも大橋くんを巻き込んだのは僕だから」
「一番におまえだろうが! で、太田はなんて言ってきたんだ」
「動画でされてるようなことしてあげるから、アカウントは消せって」
「は? 脅迫じゃねぇか」
アダルト系コンテンツは脅迫や脅しの対象になりやすい。金銭を要求する事件も起きているが、泣き寝入りする人間が多いのも実情だ。
大橋は、小島が言っていた、太田がもともとそっちの人間だということや、望月と親密そうに話していたということを唐突に思い出した。
「確認するけど、おまえは太田のことそういう対象では見てないってことでいいか?」
望月は、大橋の目を見て、しっかりと頷いた。
「それで、おまえが慌ててアカウント消した理由はわかった。太田には間違いなくバレたのか? まだ太田は疑っているだけじゃないのか?」
「黒丸って実況者を知ってるかと聞かれた」
「は?」
「週末、黒丸と話していたのは、おまえか?と聞かれて」
「ちょっと待て」
まさか漏らしたのは、黒丸だと言うのか? 太田は黒丸とどこで繋がってる?
「僕、動揺しちゃって、そしたら『まさかソウがおまえだったとはな』って言われて、もうこれは無理だってなっちゃって」
望月の話から察するに、太田は黒丸とソウが撮影をしていたことを知っている。その声から、望月だと気づいた。ということはソウの姿を見ていたわけではない。それなら、望月に対して『おまえか?』なんて確認はしない。なんだ。どういうことなんだ。
大橋は、あらゆる方向から推測を始める。
「ごめん……僕がコラボなんか引き受けたせいで……」
「そんなことはどうだっていい。今はこれからの対策を考えよう」
狼狽える望月の肩を大橋は自然と抱いた。しかし、はっ、と気づき、その手を引く。
「大橋、くん?」
「悪い。こういうのは、もうやめなきゃな」
今まで自然にしていたことだけれど、ただの会社の同僚である今は、望月に馴れ馴れしくしてはいけない。そう自分を戒めた。
「やっぱり、僕が、黒丸くんとのコラボ引き受けたこと、まだ怒ってるんだ」
「その話はもう終わっただろ」
「でもあのときは、僕が、そう返事するしかなかったでしょ!」
望月が声を荒げる。
「なんでだよ」
「だって、僕だけの大橋くんじゃないんだもん!」
「は、はぁ?」
まったく想像していなかった答えに、思わず、まぬけな声を漏らしてしまう。
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