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「会社でも大橋くんは人気だし、まさかネットにも大橋くんのファンがいるなんて思わないじゃん……僕だけが大橋くんを独り占めしてちゃいけないんだなって……」
「待て待て、おまえ、コラボ引き受けたのは、本気で俺のためなの?」
望月の目尻がみるみる赤くなる。なんだ、望月は、一体、何の話をしているんだ。
「僕が大橋くんを独占するようなことしたから、バチが当たったんだ」
「なぁ、さっきから、何言って……」
「僕だってこんなこと言うつもりなかったのに、でも大橋くんは僕のこと、ただの同僚って言うし、動画もやめたいみたいだったし……」
「あのときは仕方ないだろ、動画も、俺、やめたいなんてひとことも」
取り乱している望月に答えている自分が必死に弁解をしていることに気づく。そもそも、望月は何が不満なのだろうか。独り占めという言葉を使う、二人の関係をただの同僚と言ったのが気に入らない、動画のこともやめちゃうのか、と悲しそうな顔で聞いてきた。
――あれ?
望月の言動を思い出してみると、それはもう自分に対して抱いている気持ちが、そういうことにしか思えなかった。もしそうなら期待してしまう、いや期待ってなんだ。
「でも僕、どうしたらいいか、わかんないし」
「わかった、望月。少し整理しよう」
今にも泣き出しそうな望月の両肩を掴み、その目を見つめた。涙で潤んだ瞳は、まっすぐ大橋を見つめてくる。
「これから、俺、おまえにすっごくダサイこと聞くけど、正直に言ってほしい」
望月は小さく、こくこくと頷く。大橋は、すー、と息を吸って、ゆっくりと吐き、まずは、自分を落ち着かせたあと、穏やかに尋ねた。
「もしかして、おまえさ……俺のこと好き?」
推測だけで、こんなことを聞くなんて、普通ならどうかしてると思う。けれど、この先、望月の方から気持ちを伝えてくれるなんて想像できないし、待っていられなかった。でも、一連の望月の行動は、自分に好意がないと辻褄が合わない。
そして、案の定、それを聞いた望月は、顔を真っ赤にして、唇をぷるぷる震わせている。違うならすぐに否定するだろう。けれど言わない。やはり、そういうことなのだ。
「わかった。もういい、言わなくていい」
「ち、違うの! あの、自分でちゃんと……言いたいから、ちょっと待っ……」
「バーカ。そんなに動揺されたら肯定してるのと同じことだろ」
あ、と小さく呟いて、望月がうつむく。
「で、いつから?」
「えっと去年くらいから……」
「な……っ」
絶句した。思ってたよりもずっと前だ。
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