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「言えよ、早く!」
「そんなの、言えないよ……」
「おまえの恋愛対象って男だったの?」
「それが……そうじゃないって思ってたのに、よくわかんないんだけど、大橋くんのことは好きになれたっていうか」
「あー、もうっ」
目の前の望月を、ぎゅっと抱きしめる。
「あの、大橋……くん?」
「これから、その、今日に至るまでの一連の事情はゆっくり聞く。でもその前に言っておく。俺もおまえが好きだと思う」
「ふぇっ!」
腕の中の望月はすっとんきょうな声をあげた。
「太田のこと聞いたときも、おまえが黒丸とのコラボを受けたときも、マジで気分悪かった。つーか、俺、もうおまえを俺のものだと錯覚してたからかも」
「それは……言ってほしかった…」
「おまえが言うな! だいたいおまえの行動は無茶苦茶なんだよ」
「ご、ごめんなさい」
「もういいけどさ」
ぽんぽんと望月の頭を叩き、頬を寄せる。
「どこがいいんだよ、俺みたいな男」
それは一番聞いてみたかったところだ。
「えっと、その……大橋くんはいつもみんなに好かれてて、僕なんか、全然近寄れなくて、遠くから見つめるだけで十分だった。同期会で一緒になるたびに、かっこいいなって思ってたし……だからこないだ動画の話ができたから、編集を教えてほしいって、ちょっと勇気を出して言ってみたんだ」
「マジで? やば、なんか嬉しい」
もしかして、ちゃんと出席してくれたのは、大橋が幹事をしていたからだったとしたら、想像するだけで、顔がにやついてしまう。
「そっか、俺のことずっと見ててくれたのか」
「うん……だから、こうして仲良くなれたのが嬉しくて、ずっと今が続けばいいのにって思ってた」
目標を達成しても今後の話をしなかったのは、そういう理由もあったのだろう。徐々に望月の行動の謎が紐解かれていく。
望月の手が大橋の背中に回され、二人は一層強く抱き合った。
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