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「大橋くんこそ、なんで僕みたいな男……」
「もうこの際だから言うけど、二回目の撮影のあと、俺、おまえで勃起した」
「えっ、僕で?」
望月は慌てて、大橋の顔を見る。
「他の男じゃ勃たないから男なら誰でもいいわけじゃない。でも、俺、おまえで抜いたことは断じてないから!」
それは公私混同してはいけないと線を引いていたのだから、はっきり伝えておきたい。
「それは僕に魅力がないということでは……」
「バカ! どれだけ俺が我慢したと思ってんだよ!」
思わず声を荒げると、望月はびくっと怯え、驚いた顔をする。
「ずっとおまえのこと触りたかった。ある意味、拷問だっつーの」
「本当に……?」
望月の瞳は戸惑いからなのか、震えているが、その声は嬉しそうに弾んでいる。
「つーか、ホント、俺、撮影が終わっておまえ抱きながら我慢してたのに、それも知らないだろ?」
「……我慢しなくていいのに」
「そんなこと言うと、マジで襲うぞ」
冗談ぽく言ったのに、望月は黙って俯いた。
「え……マジで?」
「だって、好きな人とはしたいんだもん!」
「もうおまえ、本当、大胆っていうか……あー、もう!」
腕の中の望月ごと、ベッドに押し倒すと、望月の顔が目の前に迫る。その表情は、恥ずかしがりながらも、期待している顔だ。
「キスとか、していい?」
「いちいち聞かなくていいし、キスから先も、その、どうぞ……」
「なんだよ、それ」
律儀にどうぞ、と言われ、ぷは、と吹き出してしまう。けど目の前の望月はもう目を瞑っていた。長い睫毛は小さく揺れている。大橋は望月の顎を片手で掴み、ちゅ、と唇を合わせた。触れた唇は女性と変わらない柔らかさだった。あまりにも気持ちよくて再び唇を重ねる。
今、自分は男とキスをしている。数ヶ月前までは、男なんて恋愛対象に考えられなかったはずなのに、気づけばいつでも望月のことを考えていたし、望月と過ごす週末を楽しみにしていたし、望月のいやらしい姿を見て興奮した。自分の体はとっくに望月を恋愛対象として認めていたのだ。
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