01:やるからには本気で

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「これから俺はおまえを、視聴者が見たいであろう角度で撮影してみる。さっき出してから、時間経ってるし、あと一回位出せるだろ?」 「本気……?」  もじもじと恥ずかしそうな望月を見て、はぁとため息をつく。 「おまえな、もう俺に一回見せてんだろ、今さら何を恥ずかしがることあるんだ?」 「そりゃそうなんだけどさ……」 「あと、今までの動画の中で一番閲覧数が伸びてる動画は、おまえが終始カメラ目線だったやつだ。たぶん、それが一番エロいからだ。カメラじゃなくて誰かに見られてるって、意識してみろ」 「え、ってことは、世間では、いやらしい動画が多く見てもらえるってことなの?」  あまりにも無垢の度が過ぎて、言葉を失う。 「あのなぁ、ぶっちゃけ俺は男のオナニーなんかに興味はねぇけど、世の中にはそういう趣味のやつが一定数いるんだろ。そういうやつらに響くような、ヌケる動画を目指すのが、アダルトカテゴリーの中で注目されるってことだ」 「わかった……やってみる」  大橋の熱意に押されたのか、望月の表情が真剣になる。 「どうせ体張るんなら、目標達成、お気に入り百人突破をしっかり目指そうぜ」 「なんだか、大橋くん、プロデューサーみたいだね」 「おう、やるからには目標達成させるぜ」  やる気になった望月の肩をばんばんと叩いて、自分は立ち上がる。そして、カメラに映る範囲にあった邪魔になりそうなゴミ箱などの障害物を避け始める。望月もまた、服を脱ぎ始めた。 「なぁ、おまえ、さっき尻の穴使ってたけど、普通に扱いてもできるんだろ?」 「それは、できるけど」 「今度はさ、最初、下着履いたままで、下着の中で扱く感じから始めてみて」 「それは構わないけど、何か変わるもんなの?」 「日常の感じが見てみたい。それに今度は、俺が動いていやらしい角度を探す」  大橋は、ぐっと親指を立てて見せると、望月は、半信半疑の表情を浮かべながらクローゼットの引き出しを開けて、下着を物色し始めた。 「なぁ、アダルトビデオとかで見たことあるんだけど、布地が濡れて湿っていくの、いやらしいよな。おまえグレーの下着とか持ってない?」 「あるけど……これとか?」  望月がクローゼットの引き出しから、グレーでウエストの部分が黒いゴムになっているボクサーパンツを取り出して、大橋に見えるようにひらひらと振って見せた。 「それな、決まり」  再び服を脱いだ望月はグレーのパンツに着替え、さきほどと同じようにベッドに背を預けて、脇にあるクッションに座り、M字に足を広げた。大橋は三脚を最大限伸ばし、大橋が座った目線と同じ高さの位置にカメラを固定した。 「盛り上がってきたら、カメラ持って動くから」  そう告げると、望月は頷いた。
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