ホワイト・ルシアン

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ホワイト・ルシアン

その日は何となく気分がいい休みの日だったから、写真を取りに行った。 春になりかけのこの時期は桜は咲いていないが、梅は咲いているので春っぽい色の写真を撮ることが出来た。 可愛らしい桃色の花を写真に収めるの。 写真を撮っていると、たくさんの人に声をかけられるのでそれもまた楽しいのだ。 その日もやはり声をかけられた。 「お姉さん、写真撮るの上手なんですね」 明らかに年下っぽい男の子にそんなことを言われるなんて思っていなかった。 しかも彼もカメラを持ってる。 これは敵だと思われてるな…。 「ありがとうございます…。お兄さんもお写真撮るの好きなんですねっ! 」 精一杯の笑顔で返事をした。 あまり、カメラを持ってる方に話しかけられないので少し緊張してしまう。 きっと私よりも上手に撮れるんだろうなぁって。 「俺は、頼まれて写真を撮ってるだけっすよ。ほら、あそこでお団子食べてる女いるでしょ」 彼は少し不機嫌そうにお城の左側にある甘味処に目を向ける。 あっ、彼女さんの写真撮りに来てたんだ。 「楽しそう…」 「楽しくないですよ、お姉さんみたいに落ち着いた人を撮りたいですもん」 思ったことを口に出してしまった…。 そして彼は少し遠くを見ながらそんなこと言うから、少し彼のことが気になった。 本当に撮りたい人や、撮りたいものだけを撮ればいいのに。 私は独り身だからそう思ってしまったけど。 「あっ、やべ。呼ばれちゃったから行きます。お姉さん、また近いうちに会いましょう!じゃあね! 」 そう言って彼は、彼女さんの元へ行った。 私は楽しそうな二人を見ていると寂しくなるので城公園を後にした。 時間は午後7時。 昼頃に出会った彼のことはほぼ頭から抜けてしまった。 きっと思い出すことは無いだろう。 さて、そろそろお酒を飲みたい時間になってきた。 私は、マスターの元へと急いだ。 カランカランってベルが鳴るとそこにはいつも来る子がいた。 カメラを片手に私の方へと急ぎ足で来る。 「マスター!今日も写真撮ったから見て欲しいの!でも、今から見せるのは前回のだけど。あといつもの下さい」 「いらっしゃい、作った後に見るから少し待ってなさいな」 彼女はいつからだったか覚えてないけどだいぶ前から来てるお客さん。 とても写真を撮ることが楽しいらしくて仕事が休みの日には写真を撮っては店に来てくれる。 平日は仕事終わりに来てくれる日も多い。 さて、いつものって言われたけど今日は休みの日だから強いのでいいんだっけか。 でも一応聞いてこよう。 「茜音ちゃん、明日も休みかい?」 彼女は元気よく明日も明後日も休みと言ってきたので、ホワイトルシアンを作ることにした。 彼女はどんなお酒でも飲むのでこちらの腕も落ちにくくて助かるいいお客さんだ。 「お待たせ、ホワイト・ルシアンです。茜音ちゃんはなんでいつも度数が高いものを飲むんだい?」 いつも気になっていた質問をしてみた。 「えっとですね、手っ取り早く酔いたいのと写真を眺める時は酔ってる時って決めたからですかね?」 ふむ、この子はたぶん変わってる子なんだろうな。 そう思いながら彼女の写真を今日も見せてもらう。 全て見終わると新しいお客さんが来た。 「いらっしゃいませ、って秋くんじゃん。君もいつものでいいかい?」 彼は元気よくお願いしますって言ってくれた。 俺は、いつものを作りつつ茜音ちゃんの隣に座った彼が何を話すのか聞き耳を立てる。 「あれ、さっきのお姉さんじゃないですか。さっきぶりですねっ!」 さっきぶりとはなんだろうか。 マスターとしては気になるところだなぁ…。
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