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「おっ、今日は揃いの弁当じゃないのか?」
「大きな声で何ですか、青海先生」
「無垢とのお揃い弁当だよ。あいつさっき同級生引き連れて食堂でかつ丼食ってたからさ。今朝は弁当は作らなかったのか?」
「ちょっと、寝坊してしまって」
「朝型生活はやめたのかよ」
「……そう言う朝もあります、てわっ、なんで触ってくるんですか?」
青海は何の遠慮もなく私の顔を鷲掴みにした。昼休みの職員室で、生徒の目はなくとも同僚教師からこんなことをされて変な噂もたてかねられない。しかし、青海と言えど一応先輩教師だしあまり大きな声で騒ぐことも出来ないが。
「なーんか、顔色悪いんだよなあ。何かあったろ」
「別に、何もないので放っておいてください」
「こら、先輩が相談に乗ってやるって言うのに」
「……考えておきます」
青海が気を遣っているのがなんとなくは伝わって来た。しかし、この何だかよくわからない状況を全て丸投げするほど、私は子供ではない。青海だけではなく両親や無垢にだって何かと壁を払う事の出来ない、そんな歪んだ育ち方をしてしまった。生涯の孤独、別に誰を恨む訳でもないけれど。
私の額を音を立てて叩いて、ため息を後に青海は職員室から出て行った。私の机の上では、先程購買で買ったこしあんぱんが行く場所をなくしてくたびれている。何か身体に入れておかなければ、午後だって授業が詰まっているし……そんな廊下に近い職員室内の私の席を、誰かが外から覗いていた気がした。
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