第13話 赤の盗賊団 『冒険者ギルド』

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第13話 赤の盗賊団 『冒険者ギルド』

4b08c171-272d-4ede-aa17-a21203fefe6c※円柱都市イラムの概略図をアップしました。  円柱都市イラムは、超英雄族のシャッダード王が天国の都市を地表に再現するため、砂漠の中に何百年もの長い年月をかけて、数多くの宝石を使い豪華絢爛な住居や宮殿などを作った都市だ。 清らかな泉が湧き川の流れる広々とした平野が選び出され、世界中からありとあらゆる金銀宝玉等の材料が集められた。  数多くの建築士、美術家、工匠、人夫が駆り出されて、二十年を一日の速さとして美麗で壮大な都の形が整えられていき荘厳な街へと発展した。  この都市には、あらゆる種類の木々が繁茂し、貯水池から運河が縦横に巡っている。  都市長の住む宮城はといえば天を突くほどの高さで、ぐるりには一千の高楼が巡らされ、各高楼には一千の橄欖石、紅玉、碧玉の円柱が黄金の円天井を支えている。  円柱都市イラムを治めているのはシバの女王と言われる都市長のニカウレー・シバ。 彼女は『シバの女王の水瓶』という大きな貯水池施設を作ったり、商業を発展させるべくさまざまな法の整備をして援護したり、都市の発展に寄与して、市民の支持も絶大な人気がある。  シバの女王は、周辺の都市群をまとめた『バビロン地域』の支配者・ナブー・アパル・ウスルの妻であり、ナブー・アパル・ウスルは隣の街・キトルの王でナボポラッサル王と呼ばれている。  一人息子のナブー・クドゥリ・ウスルが彼女・シバの女王と一緒に宮城に住んでいてその教育に力を注いでいるらしい。  彼女は良き母でもあるのだ・・・民の人気もあり、大変有能な女性らしいな。  『バビロン地域』は国としては独立してこそいないが、その支配地域の繁栄ぶりは他の国と比べて遜色ないものではあった。  門番の男は普通に人間の姿をしていた・・・。超英雄族とのことだが、人間と見た目の姿は変わらないらしい。  門番の男が『解析魔法』を唱える。  『とおりゃんせ とおりゃんせ ここはどこの ほそみちじゃ てんじんさまの ほそみちじゃ ちょっと とおしてくだしゃんせ ごようのないもの とおしゃせぬ このこのななつの おいわいに おふだをおさめに まいります いきはよいよい かえりはこわい こわいながらもとおりゃんせ とおりゃんせ』  モルジアナにもらった『イステの歌』によると、この解析魔法『通りゃんせ』はレベル3の魔法だ。門番の専門の呪文のようで持ち物検査をしているようだ。  特に怪しいものなど持ってないオレたちは、持ち物検査を無事終えた。  オレ達は、まずは、この都市・イラムの門番に事情を説明した。  『赤の盗賊団』に襲われたこと、荷物を奪われ、カシム含む一行を殺されたこと。  それを報告し終えたところで、門番の男が、冒険者ギルドの職員でもあり、あとで冒険者ギルドへも報告をするようにと言ってきた。  「冒険者ギルドは、あの真ん中の円柱の向こう側、シバの女王様の宮城の方向に大きな看板が出ているからすぐわかるだろう。」  「ありがとうございます。あとシバの女王様へ貢物があるんですけど、それはいかがすればよろしいでしょうか?」  「ふむ、殊勝な心がけだな。さすがは、黄金都市が認めた交易商『アリノママ』だな。うむ、冒険者ギルド長、アマイモン様に話を通しておこう。 俺の名前、テン・グースカと伝えればいいだろう。」  ジュニアくんがそう進言したところ、門番のテン・グースカがそう答えた。この門番の男はギルド長直属の部下で『グースカ衆』と呼ばれる集団の一員らしい。  使っている言語は月氏の言語と若干違うところがあるが、それは方言レベルの違いであって、月氏のジュニアくんも苦労なく会話していた。  もちろん、オレは翻訳機能があるので、苦労することはなかったのは言うまでもないけどね。  街を歩きながら道行く人達を観察すると、いわゆる獣人ぽい人、普通の人間の姿の人、全身鎧の者、魚と人間の中間生物のような者など、さまざまな種族が往来していた。 それだけで、各地の種族が訪れていることがわかり、この都市の住民の数もおそらく数十万はくだらないだろうことは推測ができた。  しばらく歩いて大きな円柱をぐるりと廻ると、冒険者ギルドはすぐ見つかった。門番テン・グースカが言ったとおり、大きな看板で『冒険者ギルド』と出ていた。  ちなみにこの文字は『七雄国文字』と言われる文字で書かれており、もちろんアイ先生に習得・翻訳してもらったのでオレも読めるようになっている。  『冒険者ギルド』のさらに奥には天をも突くような見上げんばかりの邸宅・シバの女王の宮城があった。  『冒険者ギルド』は門番の派遣もやっているらしいし、旧世界の警察と警備を兼ね備えたような組織のようだ。  その扉をくぐると、受付が見えた。中には何名かの者たちがいて、その姿形はやはりさまざまであった・・・おそらく冒険者であろう。  酒場も兼ねているようだったが、今はまだお昼の『午の刻』であったので、酒場はまだ開いていなかった。  オレ達は受け付けに行き、ギルドの中にいた人間の姿をしていてメガネをかけた黒髪美人の受付嬢の女性に声をかけた。  「オレはジンと言う者だ。こっちはカシムJrで交易商人だ。ギルド長・アマイモン殿に会いたい。さきほど門番のテン・グースカさんから報告を頼まれた。よしなに頼む。」  「はい。アマイモン様に・・・ですか。テンさんから頼まれたんですね。わかりました。お取次ぎをしましょう。少々お待ち下さい。」  丁寧な応対の受付だった。メガネのふしぶしがキラリと光り、デキル女性・・・って感じがぷんぷんしていた。  (マスター!? ワタクシとどちらがデキル女性かはわかっておいでですよね?)  (お・・・おぅ・・・。)  思念通信・・・オフにしとけばよかったかな? オレはちょっとだけそう思った。  まあ、アイは間違いなく美人である、なぜならオレの大好きだったVアイドル『猫ミミク様』の姿なんだからな・・・そりゃ疑いの余地はない(きっぱり)  そして、オレを5千年の眠りから目覚めさせてくれたんだ・・・有能なのは間違いない。もちろんそこはアイのほうが上に決まっている。  (ありがとうございます!マスター! やはりマスターの肋骨からいただいたこの身体、すべてマスター好みに仕上がっておりますわ。)  ん・・・? さらりと今すごいこと言ったような・・・。  「あー、美しい女性・・・でしたねぇ・・・。」  ふと見るとジュニアくんが顔を真赤にしていた・・・。ほうけてしまっている・・・。あらら、これはネズミの初恋ってやつか?  いや、そもそも問題ないのか? 人間種と月氏、まあ、獣人ぽい人達もいることだし、その辺りの遺伝的問題とかはクリアされているのかな・・・?  なぜか、モルジアナの怒っている姿が浮かんできたのは気のせいだと思うことにしよう。  ジュニアくんには、あとで警告をしておこう・・・。  そうこうしているうちに、受付嬢の黒髪美人が戻ってきた。  「おまたせしました。アマイモン様がお会いになられます。こちらへどうぞ。私も同席させていただきます。 申し遅れました。私は、受付とギルド長付き秘書も兼任させていただいておりますフルーレティと申します。ジン様、カシムJr様、それとお仲間の方、以後よろしくおねがいします。」  「うん、わかった。フルーレティさんだね。よろしく!」  「よ・・・よろ・・・よろしくおねがいしますぅ・・・。」  「フルーレティ。ワタクシはマスター・ジン様の『パートナー』のアイです。よろしくお願いいたしますね・・・。」  「拙者はジロキチ、カシム坊ちゃまの子分でござる。」  「僕はヒルコだよ。ジン様の下僕だよ! よろしくね!」  「パートナー・・・あ、仕事の・・・でございますね。わかりました。よろしく、アイ様。ジロキチ様にヒルコ様もよろしく。」  ん・・・? 気のせいか・・・アイとフルーレティさんの目がパチパチ炎が見えるような見えないような・・・。  なんだか雰囲気が・・・こわい・・・。  ま、気にしたらダメなやつか。  フルーレティの案内で、奥のギルド長の部屋に通された。  「アマイモン様! さきほど報告しましたジン様とカシム様、その御一行をお連れしました。」  「おう!入っていいぞ!」  ガチャ。扉を開くとギルド長の部屋と思わないほど殺風景な部屋だった。  奥に机と椅子があり、手前に長椅子とソファがあり、奥の椅子に座っていた男・・・この男も人間の姿だった。    その服装は黒のスーツでビシッと決めており、つかスーツ・・・この世界に残っていたんだな・・・、さらに貴族然とした風貌、甘い容貌の二枚目な男だった―。  「はじめまして! オレがこの円柱都市イラムの冒険者ギルド長、アマイモンだ! よろしくな!」  「はい! アシア・ジンと言います。よろしくお願いします!」  「カシムJrです。よろしくお願いします!」  「ジン様のパートナーのアイですわ。」  「ヒルコだよ!悪い粘菌じゃないよ?」  「ジロキチでござる。」  「では、話を聞こうか。そこに座ってくれ。ああ、かたくるしい喋り方はしなくていいぞ、別にオレは気にしないからな。」  「ああ、わかった。じゃ、アマイモンさん、そのほうがありがたい。」  「わっ・・・わかりました。僕も・・・。では、アマイモンさんでいいでしょうか。 まずは、僕の父のカシムが殺されました。行商集団『アリノママ』の代表カシムは『赤の盗賊団』に襲われたのです!」  「うむ・・・。それはお気の毒なことだったな・・・。お悔やみを申し上げる。」  「いえ、お気持ちだけでありがたいことです。」  その後、『赤の盗賊団』に襲われたこと、荷物を奪われ、カシム含む一行を殺されたこと。オレ達が通りかかり、アーリくんを助けたこと。  そして、『血の復讐』のため、『赤の盗賊団』を討つべくやってきたことを告げた。  その間、アマイモンはじっと黙って話を聞いていた・・・。 ~続く~ ©「通りゃんせ」(曲/わらべ歌 詞/わらべ歌)
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