第209話 恐竜の街へ『潜入』

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第209話 恐竜の街へ『潜入』

9667a279-16ec-469d-ad3d-644466b06984※『ジュラシック・シティ』イメージ図  『ジュラシック・シティ』の街近くの小高い丘の上-。  「マスター! では向かいましょう! 『ジュラシック・シティ』へ!!」  アイが号令をかけた。  オレたち『ルネサンス』のメンバーと、ヘルシングさんの『ヴァンパイア・ハンターズ』のメンバーだ。  Sランク冒険者パーティーが2つそろって、攻め込むのだ。  並大抵の相手じゃあ防ぎきれないだろう……。  「待て! ジン殿! あれを見ろ! 『ディノ・ドラグーン』の『十の災い』だ!」  ヘルシングさんがその驚異的な観察力で、街の荒れ地を行軍してきている『十の災い』の軍、およそ2万の軍を見つけた。  (マスター。あれらの者たちはヘルシングさんたちにおまかせするが良いでよう。ワタクシたちは……、直接、『ジュラシック・シティ』を攻め落としましょう!)  (そうだな……。二手に分かれるか!)  「ヘルシングさん! 二手に分かれましょう。オレたちは直接『ジュラシック・シティ』を攻め落とします。ヘルシングさん……。あの2万の兵を……、おまかせしてもいいですか?」  オレがおそるおそるヘルシングさんに尋ねる。  すると……。  「わぁーっはっは! ジン殿。案ずるな! 吸血鬼どもを葬り去るのに、オレたちになんの遠慮があるものか!? 否(いな)! 安心して任せろ! 2万だろうが、10万だろうが、吸血鬼どもはオレたちの宿敵なのだ!」  「そうですよ! ジンさん! 僕たちはもう仲間じゃあないですか! みずくさいですよ!?」  「ジョナサンの言うとおりだわ。ジンさん! 遠慮なく背中は預けてくださいね?」  ヘルシングさん、ジョナサンさん、ミナさん……。  そうだ。オレたちはあの『ケルラウグ川の戦い』をともに戦った仲間なのだ。  「そうですね……。すみませんでした。遠慮なく背後はおまかせします! オレの『銅像群』たちはオートで戦うので、ぞんぶんにこき使ってください!」  「ああ。このゴーレムたちか!? いいのか? 『ジュラシック・シティ』の街の中へ行くなら戦力になるだろう?」  「いえ。オレたちは暴君タイラント・ティラノを討ちに行きます。少数精鋭のほうが逆に動きやすいのです。」  「それもそうか……。わかった! このゴーレムたちはこのヘルシングが借り受けよう!」  「ええ。お願いします。アイ! ヘルシングさんに『日本の銅像たち』の指揮権を……。」  「イエス! マスター! すでに実行しております。」  「さすがはアイ……。デキるオンナは仕事が早いねぇ……。」  「くふう!!」  アイが喜びで悶えている……。  「私たちも合流したのだ。。ご案じ召さるな。ジン殿。昔から言うではないか? 『和を以て貴しと茄子婆(なすびばばあ)が早鐘を鳴らす』……ってね。」  そう言ってきたのは、ファット・フルモス大公だった。  相変わらず、言っていることの意味はわからないが、なんとなく気持ちはわかった。  仲間を信頼することが危機を回避することに繋がるとでも言いたいのだろうか……。  「吾輩たちも吸血鬼狩りのためにやってきたのだ…。遠慮はいらないよ?」  そう言ったのは、アーサー・ホルムウッド卿だ。ゴダルミング卿の一人息子だ。  「そうじゃな。ジン殿、わしらにまかせておけ。」  ジャック・セワードも賛同する。  「ぼ……僕もがんばります……。ルーシーを取り返すんです!」  キンシー・モリスも勇気を振り絞ってそう言った。  彼は奪われた愛する人のために立ち上がったという。  ルーシーさんか……。  『不死国』にさらわれたと言う……、無事ならいいが……。  「ほらよ! あんまりのんびりもしてらんねえぜ!? 『ヴァンパイア・ハンターズ』! 久々の勢揃いだ! ぶちかましてやれ! 野郎ども!」  ヘルシングさんが檄(げき)を飛ばす!  「「おおぉーーっ!! 」」  メンバーがそれに応える。  「ご無事で!」  「ああ! ジン殿も息災でなっ!」  「はい!」  ヘルシングさんたちが『日本の銅像群』を引き連れて、『十の災い』の軍、およそ2万の軍を迎え討つべく、立ち向かっていった。  オレたちも、ぐずぐずしていられない。  「アイ! ヒルコ! イシカ! ホノリ! ……えっと……。」  「デモ子ですってば!?」  「そうそう……。デモ子! オレたちも行くぞ!」  「マスター。『ジュラシック・シティ』へいざ! 参りましょう!」  「おお! ……って、歩いていくの!?」  「まさか……! マスター。こいつをお忘れですか?」  「あ……! デモ子……。そうだった!」  「けっこう、あたし、お役に立ってません?? もっと待遇よくしてくれたって……ブツブツ……。」  「はぁっ!? なにか言ったかしら?」  「いえ! なんでもありませーんっ!」  「では、行きますね! 開け! 『異界の穴』っ!! 」  デモ子がまたまた、手をかざし、空間をまるでジッパーを開けるかのように引き裂いた。  すると、目の前の空間に巨大な穴が空く。  うん。じゃあ、行くとするか。  こうして、オレたちはまたしても『異界の穴』をくぐって、出口へ向かった。  ****  いっぽう、『ジュラシック・シティ』では-。  暴君ティラノがさらに好き放題、やっていたのだ。  母を処刑し、自分を制する者がいなくなったことで、以前から仲が良くなかった妻オクタウィアをも処刑したのだ。  しかも。その妻との結婚記念日に……である。  自らの手で妻を斬首し、その頭蓋骨で『ディノサローノ』というお酒を酌み交わしたのだ。  したたる血を飲み干すティラノ帝。  その傍らにはやはりあの女吸血鬼二人が寄り添っていたという……。  「街の者ども! みな、酔い狂うがいい! うっとおしい『法国』や、いままで我らを虐げてきた『エルフ国』の者たちを葬り去る……前日祭だ!」  ティラノ帝が声を高らかに宣言する。  「「うおおーーーぉおおおおーーーーっ!! 」」  街のディノエルフたちが歓声を上げる。  もはや、街には草食恐竜種や、平和を訴えたものはことごとく食い尽くされ、血を吸いつくされたのだ。  暴徒の街と化した『ジュラシック・シティ』。  かつて繁栄したころの面影は感じられないほど、荒れ果てているのだった。  「うえーん……。うえーん……。」  リスの獣人の子が泣いている。  「ひゃっはーーーっ!」  いたいけな子供も容赦なく、その手にかけるディノエルフの暴徒たち。  近隣の村々から集められた少数民族のエルフ種の者たちが、次々と生贄にされている。  搾り取った血を樽に詰め、ティラノ帝の館『殺戮ゲームの館』へと運ばれていくのだ。  「死ねぇ! そして、いい酒になるがいい!」  街の片隅で、リスの獣人の子がまさに殺されようとした瞬間-!  ドカァッ!!  その手の斧を振り下ろそうとしたディノエルフ種の者が何者かにぶん殴られ、吹き飛ばされた。  あわれ、その者は、上半身ごと吹き飛ばされたのだ……、命はないだろう……。  「大丈夫だったのだ!?」  さっそうと現れたその青の制服姿の女子高生……。  もちろん、それはホノリだ。  まわりにもまだいたはずのディノエルフたちが、バタバタと倒れていく。  「すべて、片付けたのである!」  イシカがその両腕のロケット・ナックルパンチで、倒していたのだ。  さらに近くにいたヤツラが見当たらなくなっていた。  「ここらのヤツラはみぃーんな、僕のお腹の中だよぉ!」  ヒルコがすべて食らい尽くしていたのだ。  「マスター! 周囲500mに敵の影はいませんわ!」  「おっけぇー!」  オレたちは唯一の生き残りのリスの獣人の子のもとへ集まった。  「君だけでも無事で良かった……。」  「お……、おにいちゃんたち……。助けに来てくれたの!?」  「ああ。遅くなってごめんな……。」  「うう……。僕の家族はみんなヤツラに……。」  「そうか……。カタキはとってやる!」  「お願いだよ! 僕にはなんのチカラもない……。あの、暴君ティラノを倒してほしい……。」  「……わかった。それは引き受けよう!」  「みんな……。遠慮はいらない。ヤツラには……容赦せん!」  オレはあらためて、ヤツラに対して憎悪と嫌悪感を抱いたのだった-。 ~続く~
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