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第218話 空中戦『猫の街』
はるか上空から、ものすごいスピードで、オレたちの目の前に現れた真っ白いしなやかなスマートな白猫……。
その白猫が、しゃなりと立ち上上がり、こっちを見ている。
仲間になりたそうだ……。
「あら!? かわいい猫ちゃんね?」
「ほぉ? これは珍しいな。猫又か?」
アテナさんもヘルシングさんも、急に現れたネコタマコ先生に驚いている。
「みんな! こちらは『円柱都市イラム』で教師をしているネコタマコ先生だよ! よろしくね!」
「ネコタマコにゃー! ジンさんにはお世話になってるにゃー! よろしくにゃん!」
「ほぉ? ジン殿とよしみを通じているのか。さすがは知能が高いと噂されるネコマタだな。オレはヘルシングだ。よろしくな。」
「私は『法国』のパラス・アテナだ。よろしく頼む。」
「私は情報屋『ヤプー』のサルガタナスよ。あなた、なかなかのスマートボディね?」
こうして、オレたちは『ウルタール』の街へ急ぐ。
まだ、街は無事のようだが……。
『日本の銅像軍』は、街の周囲の防衛に当たらせる。
北にはクラーク博士像、東には西郷隆盛銅像、西には長崎・平和祈念像、南には島津義弘像がそれぞれの将として防衛にあたる。
アイの防衛システムと連動させるので、それは強固な軍になるだろう。
オレたちは街へ向かう。
『ウルタール』の目印となる美しい橋があり、それを渡り、『ウルタール』にたどり着いた。
お! 街の門が見えてきた。
門番のヒトが……、いや! 猫だ!
門番猫がいるぞ!
その門番猫がオレたちのことを見て声をかけてきた。
「ふむ。そなたらはどこから来たのだ?」
「ああ。『チチェン・イッツァ』からだよ。」
「にゃんと!? そうか! 援軍が来てくれたか!?」
ん……? 今、にゃ……って言ったよね?
やはり、門番猫も猫だな。
「あーあー。私は『法国』のパレス・アテナだ。賢人アタル様はいらっしゃるか?」
「にゃんと!? アテナ……様!? これは、マコトにゃのか!? ご無礼を! 私は門番猫ゲートキャットです! 失礼しました! どうぞ! お通りを!!」
うわぁ……。やっぱりアテナさんって有名人だし……、VIPなんだな。
顔も知れ渡っているみたいだし……。
超有名人だわ。
オレ、失礼してないかな? これ……。
街の中を進むと、玉石敷きの通りがあり、尖り屋根の家や豊かな農場が広がり、神官アタルが住む美しい神殿が見える。
すると、前の方から三匹の猫が急ぎ足でやって来たのだ。
「にゃー! あたしは怪猫キャス・パリーグ! あにゃたたちを迎えに来たわ!」
「んにゃー! 僕は妖精猫ケット・シーさ! 門番猫のゲートから連絡を受けて参上した!」
「にゃにゃー! うちは招き猫のたま! あんたたち! 我がが我ががって前に出過ぎにゃのよ! 後ろに下がってな!」
「「招き猫のアネキ! すまんにゃー!」」
なんだかトリオ漫才の掛け合いみたいなことをして、二匹の猫が一歩後ろに下がった。
「おお! そちらにおわすは、猫又のネコタマコ様にゃあありませんか!?」
招き猫のアネキがネコタマコ先生を見つけて、そう言った。
「ふむ。久しぶりニャ! 元気にしてかにゃ?」
「ええ! ネコタマコ様もふらっと街を出ていって、今までどうしてたんですか!?」
「にゃーは『円柱都市イラム』にいたのにゃ!」
「にゃるほど! でも、またどうして街にお戻りで?」
「ああ。ここにいるジン様に頼まれて来たのにゃ! それに……、『ウルタール』に危機が迫っているらしいのにゃ!」
「にゃんと!? それは大変ニャ! さあ、急いで神官アタル様のもとへ!」
オレとアイは超ナノテクマシンの翻訳モードで聞いていたので、猫の言葉も理解できたのだが、アテナさんやヘルシングさんたちは……。
それに、この言葉、黒猫語じゃあなかったんだな……。猫の言葉、猫語というべきか……。
ヘルシングさんたちは、ポカンとしている。
だが……、アテナさんが急に目をハートにして、猫たちに頬をスリスリし始めたのだ!
「「「にゃ!? にゃにを! あ、はぁ……!」」」
喉をゴロゴロさせられて、三匹が次々と地面にごろにゃんと転がる。
「なになに!? 可愛い!! 猫ちゃんじゃあないの!? ほら? ニーケ! 見てみて!」
「はいはい。アテナ様。アテナ様って本当、猫派ですよねぇ。」
「アテナ様。あまり、はしゃがれなさるな……。」
「んもう! グラウコーピス! ネコタマコ先生もキレイだけど、このコたちは可愛いわー!」
「ふぅ……。アテナ様! ちょっと威厳というものをもう少しお考えください!!」
グラウコーピスさんもエリクトニオスさんもアテナさんのはしゃぎっぷりに引いてしまったようだ……。
「さすがに耳に聞こえし『ウルタール』の街だな。猫の街……そう言っても過言ではあるまい。」
「ええ。ヘルシングさん。そうですね。オレもこんなにもふもふがいるなんて嬉しい限りですよ。」
「ええ!? 我が主(あるじ)! 我の羽根をその『もふもふ』と言って褒めてくれたではないか!? 我とどっちがもふもふなのです!?」
ええ……。
コタンコロ……、君、そこで張り合うの?
もふもふって意味、勘違いしてない?
「待って待って! ジン様は僕のこともぽわぽわで気持ちいいって言ってくれてたよ!? ぽわぽわともふもふ、どっちがいいのかなー!?」
ああ……。ヒルコまで……。
「いや! イシカもJKJKって言って喜んでくれたであるゾ!? ジン様!」
「そうだよ! ホノリも制服制服って言って嬉しそうだったのだ!」
え……、ええ……。
イシカにホノリ、君らのそれはちょっと違った意味になってきてないか?
オレ、とんだド変態みたいじゃあないか!?
ただ、旧世界の制服や女子高生の姿が懐かしかっただけなんだよぉおおおお!!
「ちょっと、みんな、お待ちなさい! それを言うなら、マスターは、閨(ねや)であんなにもワタクシのこと、お褒めくださりましたわ! それにあんなことやこんなことまで!!」
ちょ……!
アイさん?
それ、めっちゃくちゃ、恥ずかしいんだけどぉおおおおおっ!!
ああ……。
みんなのジト目が痛い……。
ん?
デモ子、なんだい?
君までこっち見てるけど……。
「ジン様……。さすがですね! あのアイ様をこれほどまでに心酔させるだなんて……。あな恐ろしや……。」
デモ子がボソリとつぶやいた。
「ちょっと! ジンさん! 惚けてないで! 早く行くにゃよ!」
ネコタマコ先生が、オレに声をかけてきた。
「ああ! ごめんごめん。ほら! みんな! 行くよ!」
「「はい!!」」
「ほんっと……。おかしな御方ですわね。ジンさんって……。」
「そうですねぇ。サルガタナス様。」
サルガタナスさんたちも続く。
この『ウルタール』の街を治めているのは、神官のアタル様という方らしい。
なんでも高名な賢人だったバルザイさんのお弟子さんだったという……。
うん。知らない人を知らない人で評価されてもわからないな。
だが、猫好きなことは間違いないだろうなぁ。
さて、神殿の門が見えてきたぞ。
なんと立派な門だろう……。
なんだか寺院の門のような……。
んん……!?
門の上に猫が寝ているぞ!?
「あれ!? 門の上に猫が!?」
「ああ。お気づきになりましたか? あやつは眠り猫のジンゴロウですわ。ああやって神殿に入ってくる者を見定めているんにゃ!」
招き猫のアネキがそう教えてくれたが……。
いやいや!
寝てたら、見定めることなんてできないだろう?
なにがにゃんだか……、なんだかわからなくなってきたな……。
~続く~
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